建設業許可の「業種追加」と「般・特新規」ってなに?基本から手続きまで分かりやすく解説
建設業許可の「業種追加」と「般・特新規」ってなに?基本から手続きまで分かりやすく解説

建設業を営んでいくにあたって「新しい分野に進出したい」「より大規模な工事を受注したい」といった際に知っておくべき手続きが、「業種追加」と「般・特新規」です。
この二つは名前が似ていますが、目的も要件もまったく異なる別々の申請です。違いを正しく理解していないと、手続きに余計な時間やコストがかかる可能性があります。
この記事では、建設業許可の専門家が、この「業種追加」と「般・特新規」について、分かりやすく徹底的に解説します。少しでもご参考になれば幸いです。
目次
1|はじめに:建設業許可の種類をおさらい
まず、前提として建設業許可の種類を簡単におさらいしましょう。
建設業許可は、一般と特定の二つの区分に分かれています。
- 一般建設業許可(通称:般)
- 元請けとして、下請けに出す金額の合計が5,000万円未満(建築一式工事の場合は8,000万円未満)の工事を行う際に必要な許可です。
- 多くの建設業者が、まずこの一般建設業許可を取得します。
- 特定建設業許可(通称:特)
- 元請けとして、下請けに出す金額の合計が5,000万円以上(建築一式工事の場合は8,000万円以上)となる工事を行う際に必要な許可です。
- 一般許可よりも厳格な要件(財産的基礎など)が求められます。
この一般・特定という区分の違いが、「般・特新規」という概念の根幹となります。
別記事:一般建設業許可と特定建設業許可の違いを解説
2|「業種追加」と「般・特新規」の違いを理解する

それでは本題に入ります。この二つの手続きは、それぞれ何のための申請なのでしょうか?
| 業種追加 | 般・特新規 | |
| 目的 | 現在持っている許可の種類(一般 or 特定)は変えずに、対象とする工事の種類(業種)を増やすための手続き。 | すでに取得済みの建設業許可以外の種類の許可を取得する手続き。具体的には、「一般」のみ+新たに「特定」を追加、または「特定」のみ+新たに「一般」を追加する場合に利用します。 |
| 申請要件 | 追加したい業種に関する要件を満たす必要があります。具体的には、その業種の専任技術者や、場合によっては経営業務の管理責任者の要件を満たす必要があります。 | 新たに取得する許可(特定 or 一般)の要件を全て満たす必要があります。特に「特定」を新たに取得する場合は、財産的基礎(資本金や自己資本額など)の要件が一般許可よりも厳しくなります。 |
| 主な例 | ・すでに内装仕上工事業(特定)の許可を持っている会社が、新たにとび・土工工事業(特定)の許可も取得したい場合。 ・電気工事業(一般)の許可を持っている会社が、管工事業(一般)の許可も取得したい場合。 | ・電気工事業(一般)のみ許可を持っている会社が、管工事業(特定)を新たに取得する場合。 ・複数の業種で特定建設業許可を取得している会社が、新事業開始に伴い全く別の業種の一般建設業許可を新たに取得する場合。 |
3|ケーススタディ:あなたの会社はどちらの申請が必要?
ここでは、実際の事業の状況を想定して、どちらの申請が必要になるか具体的に見ていきましょう。
ケース1:新しい分野に進出したい(一般許可のまま)
【状況】 あなたは現在、建築一式工事業と大工工事業の一般建設業許可を持っています。事業を拡大するため、新たに内装仕上工事業の工事も請け負いたいと考えています。
【必要な手続き】 必要なのは「業種追加」です。現在持っている「一般」という許可の区分は変えずに、「内装仕上工事」という新しい業種を追加することになります。
ケース2:元請けとして大きな下請け工事を出したい
【状況】 あなたは現在、電気工事業と管工事業の一般建設業許可を持っています。ある大型プロジェクトで、元請けとして合計6,000万円の電気工事を下請け業者に工事を発注する予定です。
【必要な手続き】 必要なのは「般・特新規」です。一般許可では、5,000万円以上の下請け契約はできません。この工事を受注するためには、「電気工事業」の許可を「一般」から「特定」に切り替える必要があります。他にも、管工事の一般建設業許可を取得しているため、一般建設業許可のみの状態+新たに特定建設業許可という状況になるため、「般・特新規」となります。
4|申請手続きの具体的な流れと注意点

「業種追加」と「般・特新規」のどちらが必要か分かったら、いよいよ具体的な申請手続きです。ここでは、それぞれの申請における主な流れと注意点を解説します。
1. 申請書類の準備
特に「般・特新規」で「特定建設業許可」を新たに取得する場合は、「財産的基礎」を証明する書類(貸借対照表、損益計算書など)が非常に重要になります。具体的には、自己資本が2,000万円以上あるかなど、厳格な基準を満たす必要があります。
また、「業種追加」の場合は、追加する業種に応じた「専任技術者」の要件を満たしていることを証明する書類が中心となります。
2. 申請先の確認
申請先は、許可の種類によって異なります。
- 都道府県知事許可:営業所が1つの都道府県内にある場合
- 国土交通大臣許可:営業所が複数の都道府県にまたがる場合
申請書類の提出先は、各都道府県の建設業課や、地方整備局になります。
3. 審査期間と費用
申請から許可が下りるまでの期間は、概ね1ヶ月半から3ヶ月程度が一般的です。書類に不備があると、さらに期間が長引く可能性があります。
また、申請には法定の手数料が発生します。
- 業種追加(都道府県知事許可):5万円
- 般・特新規(都道府県知事許可):9万円
- 般・特新規(国土交通大臣許可):15万円
5|まとめ:最適な選択で事業を成長させる

この記事では、建設業許可における「業種追加」と「般・特新規」の違いについて詳しく解説しました。
- 業種追加:同じ許可の種類(一般 or 特定)の中で、請け負う工事の種類(業種)を増やすための手続き。
- 般・特新規:今までは一般or特定のみだったのを新しく、取得していない方(特定or一般)の許可を取得する手続き
この違いを正確に理解し、あなたの事業計画に合った適切な申請を行うことが、スムーズな事業拡大への第一歩となります。迷ったときは、許可申請の専門家である行政書士に相談しましょう。


