建設業許可は個人事業主(一人親方)でも取得できる!条件・流れ・注意点を徹底解説


建設業許可は個人事業主(一人親方)でも取得できる!条件・流れ・注意点を徹底解説

「建設業許可は法人じゃないと無理なの?」 「個人事業主(一人親方)でも建設業許可は取れるの?」

このような疑問をお持ちの方は少なくないのでしょうか。結論から申し上げますと、個人事業主でも建設業許可を取得することは可能です。(建設業でいう個人事業主は、一人親方と言われることが多いです)

しかし、法人と比較して取得のハードルが高いと感じる方もいらっしゃるかもしれません。本記事では、個人事業主が建設業許可を取得するための条件、具体的な流れ、そして注意点について解説いたします。

1:建設業許可とは?なぜ個人事業主にも必要なのか

建設業許可とは、建設工事を請け負う際に、請負金額が一定額以上になる場合に必要となる許可です。具体的には、1件の請負代金が500万円以上(建築一式工事の場合は1,500万円以上または延べ面積150㎡以上の木造住宅工事)の建設工事を請け負う場合に、建設業許可が必要となります。

この許可制度の目的は、発注者保護と建設業の健全な発展です。無許可業者が横行すると、手抜き工事やトラブルが増加し、業界全体の信頼性が損なわれてしまいます。そのため、一定の技術力や財産的基礎を持つ業者にのみ許可を与えることで、質の高い建設工事を担保しているのです。

個人事業主であっても、大規模な工事や公共工事を受注するためには、この建設業許可が必須となります。無許可で請負金額が500万円以上の工事を請け負った場合、罰則(3年以下の懲役または300万円以下の罰金)の対象となるため、注意が必要です。

2:個人事業主が建設業許可を取得するメリット・デメリット

個人事業主が建設業許可を取得することには、以下のようなメリットとデメリットがあります。

メリット

  • 請負金額の上限撤廃: 500万円以上の工事を受注できるようになり、事業規模を拡大できます。
  • 公共工事の受注機会の増加: 建設業許可は、公共工事の入札参加資格の前提条件となることがほとんどです。
  • 元請業者との信頼関係構築: 許可を持っていることで、元請業者からの信頼を得やすくなります。下請業者としてだけでなく、元請業者として仕事を受けるチャンスも広がります。
  • 社会的な信用の向上: 許可業者は、一般消費者や取引先から見て、より信頼できる事業者と認識されます。

デメリット

  • 要件のクリアが難しい場合がある: 特に「経営業務の管理責任者」と「専任技術者」の要件を満たすのが、個人事業主にとってはハードルとなることがあります。
  • 申請準備に時間と手間がかかる: 必要書類が多く、収集や作成に時間と労力がかかります。
  • 取得・維持費用がかかる: 申請手数料や、許可取得後の更新費用、場合によっては行政書士への依頼費用などが発生します。
  • 許可取得後の義務: 帳簿の備え付けや決算報告書の提出など、許可業者としての義務が発生します。

これらのメリットとデメリットを比較検討し、ご自身の事業の方向性に合わせて許可取得の是非を判断することが重要です。

3:個人事業主が建設業許可を取得するための要件

建設業許可を取得するためには、大きく分けて以下の7つの要件をクリアする必要があります。個人事業主の場合も、これらの要件は法人と同様に必要となっています。

3.1. 経営業務の管理責任者の要件

建設業の経営において、適切な判断能力と経験を持つ人物が在籍していることを示す要件です。原則として、建設業に関する5年以上の経営業務の管理責任者としての経験を有していることが求められます。

  • 経営経験の具体的な期間:
    • 許可を受けようとする建設業に関し、5年以上経営業務の管理責任者としての経験
    • 許可を受けようとする建設業以外の建設業に関し、6年以上経営業務の管理責任者としての経験
    • 個人事業主の場合、ご自身が事業主として、あるいは支配人や役員としての経営経験
  • 経験を証明する書類: 確定申告書、工事請負契約書、請求書、通帳の写しなど、経営経験が確認できる書類が必要です。特に個人事業主の場合は、確定申告書の事業内容が建設業であることが重要になります。

3.2. 専任技術者の要件

建設工事の施工を適切に管理・指導できる専門的な技術力を持つ人物が在籍していることを示す要件です。建設業法に定める国家資格の保有者、または一定期間の実務経験を有する者が該当します。

  • 国家資格による要件: 各業種に対応する国家資格(例:一級建築士、二級建築士、1級土木施工管理技士、2級土木施工管理技士など)を保有している場合、その資格が専任技術者としての要件を満たします。
  • 実務経験による要件: 指定学科卒業者の場合、卒業後3年以上の実務経験。 指定学科以外の卒業者の場合、卒業後5年以上の実務経験。 学歴不問の場合、10年以上の実務経験。 これらの実務経験は、建設工事の施工に関する経験であり、その内容を詳細に証明する必要があります。
  • 専任性について: 専任技術者は、その営業所に常勤し、他の会社の役員や従業員として勤務していないなど、専任であることが求められます。個人事業主の場合、事業主自身が専任技術者を兼ねるケースが多いです。常勤しているかの証明を求められる場合もあるため、いわゆる「名義貸し」はできません。

3.3. 誠実性の要件

申請者やその役員が、請負契約に関して不正な行為や不誠実な行為をするおそれがないことを示す要件です。欠格要件とは別の項目になります。この要件はあまり気にする必要はなく、クリアできます。

3.4. 財産的基礎の要件

建設工事を適切に遂行するための財産的基礎があることを示す要件です。

  • 一般建設業の場合: 以下のいずれかを満たす必要があります。
    • 自己資本が500万円以上であること
    • 500万円以上の資金を調達する能力があること
    個人事業主の場合、確定申告書や残高証明書などで自己資本額を証明します。
  • 特定建設業の場合: 特定建設業の許可は、元請として下請契約の請負代金の総額が4,000万円以上となる工事を請け負う場合に必要となります。一般建設業よりも厳しい要件が課せられます。
    • 欠損の額が資本金の額の20%を超えていないこと
    • 流動比率が75%以上であること
    • 資本金が2,000万円以上であること
    • 自己資本の額が4,000万円以上であること
    個人事業主が特定建設業許可を取得するケースはあまり無いですが、参考程度にご覧ください。

3.5. 欠格要件に該当しないこと

申請者やその役員などが、一定の欠格要件に該当しないことが求められます。詳しくは別記事で欠格要件について解説しておりますのでそちらをご覧ください。
この欠格要件は、「心当たりがないし大丈夫だろう」と軽く考えるのではなく、しっかりと確認をしておきましょう。

3.6. 社会保険への加入義務

健康保険、厚生年金保険、雇用保険といった社会保険への加入が義務付けられています。個人事業主で従業員を雇用している場合、これらの社会保険に適切に加入している必要があります。一人親方の場合でも、一部の保険加入が求められることがあります。

3.7. 営業所の設置

建設工事の請負契約を実際に締結することのできる営業所を設置していることが要件となります。独立したスペースが確保されており、契約を締結したり、事業ができることを示す必要があります。

4:個人事業主が建設業許可を取得するまでの具体的な流れ

個人事業主が建設業許可を取得するまでの一般的な流れは以下の通りです。

4.1.要件の確認と必要書類の収集

まずは、ご自身の事業が前述の7つの要件をすべて満たしているかを確認します。特に経営業務の管理責任者と専任技術者の要件については、建設業許可の手引きで専任技術者の要件資格を詳細に確認し、必要な書類を漏れなく収集します。この段階で不足しているものがあれば、どうすれば要件を満たせるのかを検討します。
取得する業種を間違えてしまうと、再度許可の取り直しとなるため業種選択も慎重に行ってください。

4.2.申請書類の作成

必要書類が揃ったら、建設業許可申請書を作成します。申請書は都道府県庁や国土交通省のホームページからダウンロードできます。膨大な数の書類と記載事項があり、専門知識が必要となるため、非常に手間がかかる作業です。誤字や記載漏れがないよう、慎重に作成する必要があります。

4.3.申請書の提出

作成した申請書と添付書類を、行政庁(群馬県知事許可の場合:群馬県庁)に提出します。

  • 知事許可: 営業所が1つの都道府県内にのみ設置されている場合。
  • 大臣許可: 営業所が複数の都道府県にまたがって設置されている場合。

個人事業主の場合、ほとんどが知事許可に該当します。申請手数料として、新規申請の場合は9万円が必要です。

4.4.審査

申請書が提出されると、書類の審査が行われます。書類に不備がないか、要件を満たしているかなどが厳しくチェックされます。場合によっては、追加資料の提出を求められることもあります。審査期間は、都道府県によって異なりますが、一般的には1ヶ月から2ヶ月程度かかることが多いです。

4.5.許可通知書の受領

審査が問題なく完了すれば、建設業許可通知書が交付されます。お疲れ様でした、これで晴れて建設業許可業者となります。

5:個人事業主が建設業許可を取得する際の注意点

個人事業主が建設業許可を取得するにあたって、特に注意すべき点をいくつかご紹介します。

5.1. 個人事業主の屋号

建設業許可は、個人事業主の場合、個人名(氏名)に対して付与されます。屋号を記載することはできますが、あくまで付随的な情報であり、許可の名義は個人名です。ご注意ください。

5.2. 法人成りとの比較検討

個人事業主として建設業許可を取得した後に、事業規模の拡大に伴い法人化を検討するケースは少なくありません。個人事業主の許可は法人に引き継ぐことができないため、法人を設立した場合は、改めて法人名義で建設業許可を申請し直す必要があります。

最初から法人として許可を取得する方が、将来的な手続きの手間を省ける場合もあります。今後のことも含め、個人事業主のままでいるか、法人成りするかを慎重に比較検討することをおすすめします。

5.3. 許可取得後の義務と更新

建設業許可を取得したら終わりではありません。許可取得後も、以下の義務が発生します。

  • 決算変更届の提出: 毎事業年度終了後、4ヶ月以内に決算変更届を提出する必要があります。
  • 許可の更新: 建設業許可の有効期間は5年間です。有効期間満了前に更新申請を行う必要があります。更新を怠ると、許可が失効してしまいます。

これらの義務を怠ると、罰則の対象となるだけでなく、将来の更新に影響が出る可能性もあるため、計画的に対応していくことが重要です。

5.4. 行政書士(専門家)への依頼を検討

建設業許可の申請は、非常に複雑で専門知識を要します。必要書類の多さや、要件など、個人で全てを完結させるのは中々難易度が高いです。特に日々の業務に追われている方にとっては、申請準備に多くの時間をかけるのが難しいですよね。

行政書士は、建設業許可申請の専門家です。書類作成から申請代行まで一貫してサポートしてくれるため、時間と手間を大幅に削減し、スムーズな許可取得へと導いてくれます。費用はかかりますが、確実に許可を取得し、事業に専念できることを考えれば、依頼を検討する価値は十分にありだと考えます。

6:まとめ:個人事業主の建設業許可取得は、事業拡大への第一歩

今回は、個人事業主が建設業許可を取得するための条件、流れ、そして注意点について詳しく解説いたしました。

個人事業主であっても、適切な準備と要件を満たせば、建設業許可を取得することは十分に可能です。許可取得は、500万円以上の大規模工事や公共工事の受注を可能にし、信用力を向上させ、将来的な事業拡大の大きなきっかけとなります。

要件の確認、必要書類の収集、そして申請書類の作成は大変な作業ですが、諦めずに取り組むことで、新たなビジネスチャンスを掴むことができます。もし、ご自身での手続きに不安がある場合は、我々行政書士などの専門家への依頼も積極的に検討し、スムーズな許可取得を目指してください。

弊所「宏興行政書士事務所」では、新規取得のみでなく毎年の決算変更届や更新もサポートさせていただきます。
元職人の行政書士が全力でサポートさせていただきますので、是非ご相談お待ちしております。

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