【建設業法】そもそも建設業法ってどんな法律?施行令と施工規則の違いは?
【建設業法】そもそも建設業法ってどんな法律?施行令と施工規則の違いは?

建設業法という言葉はよく目にするけど、実際どんな法律なの?そのような疑問をお持ちの方は意外と多いのではないでしょうか。「法律で許可が必要な工事が決められている」というくらいの認識の方も多数いらっしゃるかと思います。
建設業法とは。建設業法の第一条でこのように明記されています。
建設業を営む者の資質の向上、建設工事の請負契約の適正化等を図ることによつて、建設工事の適正な施工を確保し、発注者を保護するとともに、建設業の健全な発達を促進し、もつて公共の福祉の増進に寄与することを目的とする。
今回は、建設業法の全体像と施行令、施行規則の違いについて解説していきます。
1:建設業法の全体像
建設業法は、建設業界の秩序を保つために、以下のような様々な側面を規定しています。
1. 許可制度
建設業を営むためには、原則として国土交通大臣または都道府県知事の許可が必要です。この許可は、請け負う工事の規模や種類に応じて、一般建設業と特定建設業に分かれています。一般建設業は下請けに出す金額が小規模な工事を請け負う業者向け、特定建設業は大規模な工事を下請けに出す業者向けです。許可を受けるためには、経営業務の管理責任者や専任技術者などの要件を満たす必要があります。この制度により、一定の条件を満たした業者だけが建設業を営むことができるようになっています。
2. 請負契約
建設工事の請負契約は、トラブルを防止するために書面で行うことが義務付けられています。契約書には、工事内容、請負代金の額、支払い方法、工事期間などを明確に記載する必要があります。特に、請負代金の支払いに関しては、発注者から元請け、元請けから下請けへと、適切な期間内に支払われるように定められています。
3. 施工体制
元請け業者が複数の下請け業者に工事を一括して発注する一括下請けは、原則として禁止されています。これは、責任の所在が不明確になり、品質や安全性の低下を招く恐れがあるためです。また、工事現場には、工事の規模や種類に応じて、主任技術者や監理技術者を配置しなければなりません。これにより、工事の品質や安全が確保されます。
4. 監督処分
建設業法に違反した業者に対しては、指示、営業停止、許可の取り消しなどの厳しい処分が科されます。これにより、法律の遵守が徹底され、業界全体の信頼性が保たれます。
2:建設業法施行令と建設業法施行規則の違い
建設業法には、法律本体の他に、「施行令」と「施行規則」という二つの下位法令が存在します。これらは、法律の具体的な内容を補完し、詳細な規定を定めています。
分かりやすく言うと、「建設業法の中に具体的な内容を盛り込むと量が膨大になってしまうので施行令や施行規則を設けている」といったイメージです。
建設業法施行令(政令)
施行令は、法律を具体的に施行するために必要な事項を定める政令です。内閣によって制定され、法律よりも具体的な内容を定めますが、法律の枠組みを超えることはありません。
- 具体的な規定事項
- 許可の要件: 法律で定められた許可要件(経営業務の管理責任者や専任技術者など)について、具体的な資格や経験年数などを規定しています。例えば、特定の資格が専任技術者として認められるかどうかなどです。
- 請負代金の支払い: 法律では「適切な期間内」とされていますが、施行令ではその具体的な期間(例えば「引き渡しから〇日以内」など)を定めています。
- その他: 建設工事の種類や規模に関する具体的な基準、罰則の適用範囲など、法律の抽象的な規定を具体化しています。
イメージとしては、法律の「大まかな骨組み」に対して、施行令は「具体的な肉付け」をする役割を果たしています。法律だけでは判断が難しい細かな部分を、国民全体に適用される形で定めています。
建設業法施行規則(省令)
施行規則は、法律や施行令をさらに詳細に実施するために、主務官庁である国土交通省が定める省令です。施行令よりもさらに細かく、実務的な手続きや様式などを定めています。
- 具体的な規定事項
- 申請手続き: 許可申請書の具体的な様式や記載方法、添付すべき書類の種類など、申請に必要な実務的な手続きを定めています。
- 帳簿の様式: 法律で定められた帳簿の作成義務について、その具体的な様式や記載事項を規定しています。
- 現場の標識: 工事現場に掲示する標識の様式や記載すべき内容など、現場での具体的なルールを定めています。
イメージとしては、法律の「骨組み」、施行令の「肉付け」に対して、施行規則は「さらに細かな装飾や手続き」を定める役割を果たしています。主に、行政手続きや実務的な運用方法について規定しており、国民が直接目にすることが多い部分です。
まとめ:法律・施行令・施行規則の関係
建設業法・施行令・施行規則の関係を分かりやすく表すとこのようになります。
- 法律(建設業法): 国会が制定する最上位のルール。建設業の目的、許可制度の基本、契約の原則など、大きな枠組みを定めています。
- 施行令(建設業法施行令): 内閣が制定する具体的なルール。法律の規定を具体化し、資格要件や支払い期間など、全国一律に適用される基準を定めます。
- 施行規則(建設業法施行規則): 国土交通省が制定する実務的なルール。施行令をさらに細分化し、申請書の様式や帳簿の記載方法など、行政手続きや実務上の細則を定めます。
このように、建設業法は、法律、施行令、施行規則という三つの階層から成り立ち、大まかな方針から具体的な手続きまでを定めていることで、建設業界全体の適正な運営を可能にしているのです。