建設業が人手不足なのはなぜなのか?原因は?現状と解消に向けて、今取り組むべき課題
建設業が人手不足なのはなぜなのか?原因は?現状と解消に向けて、今取り組むべき課題

現代社会を支える基盤である建設業が、深刻な人手不足に直面しています。この問題は単なる労働力不足にとどまらず、日本の未来の社会インフラを脅かす重大な課題です。
今回は、建設業の人手不足がなぜ起こっているのか、その複雑な原因を深掘りし、現在の業界が抱える厳しい現状、そしてこの課題を解消するために私たちが今、取り組むべき具体的な対策について解説します。
加えて、過去職人として約5年ほど現場を経験してきた、Z世代(平成11年生まれ)の私の意見も交えて書いていきます。
これから人を採用していきたいと考えている建設業者様に少しでも参考にしていただけると幸いです。
1:建設業が人手不足なのはなぜ?3つの主な原因
建設業の人手不足は、いくつかの構造的な問題が絡み合って生じています。これらは「少子高齢化」という社会全体の課題に加え、業界固有の要因が加わることで、さらに深刻化しています。
1. 労働者の高齢化と若年層の入職者減少
建設業の人手不足の根本原因は、世代交代がうまくいっていないことにあります。
- 高齢化の進行: 日本の建設労働者のうち、55歳以上が全体の3割以上を占めています。多くのベテラン技術者が定年を迎え、一斉に引退していく「2025年問題」が目前に迫っています。
- 若年層の減少: 高校卒業者の建設業への就職率は、全産業平均に比べて低く、若者の入職者が増えていません。魅力的な働き方やキャリアパスが十分に伝わっていないことが一因です。
このままでは、優れた技術やノウハウが次世代に引き継がれず、業界全体の技術力が低下する恐れがあります。
もちろん職種にもよりますが、70代の方もかなり現場では見受けられました。40代の方でも若手扱いされているのが現場の現状です。
2. 労働環境の厳しさと「3K」のイメージ
「きつい・汚い・危険」という、いわゆる3Kのイメージが、若者や女性が建設業を敬遠する大きな理由となっています。
- 長時間労働: 工期の遅れを取り戻すための残業や、天候に左右されることによる休日出勤が多くなりがちです。これにより、ワークライフバランスを保つことが難しいと認識されています。
- 肉体的な負担: 重い資材の運搬、高所での作業、夏場の過酷な暑さや冬場の厳しい寒さの中での作業など、体力的な負担が大きい仕事が多いです。
- 危険な作業環境: 高所作業や重機を扱う作業など、常に事故のリスクが伴うため、安全管理が不可欠です。しかし、この「危険」というイメージが払拭されていません。
また、天候という面で追記しますが、工期の関係上雨の日でも作業をしなければ間に合わないという職種もあります。
ベテランの職人さんが若いころはある程度工期に余裕があり、「雨が降ったら休み」という風潮だったようですが
現在は雨に打たれながらの作業が当たり前になっています。
そういった面も敬遠する要素の一つであると考えます。
一方で、雨が降ると作業をしたくてもできない職種はその分収入が減ってしまう。という問題もあります。
これは非常に難しい問題なのではないでしょうか。
3. 業界の魅力が伝わらない情報発信の不足
建設業は、私たちの生活に不可欠なインフラや建物を作り、社会に貢献する非常にやりがいのある仕事です。しかし、その魅力が十分に伝えられていません。
- 情報発信の不足: 建設会社の多くは、採用活動や広報活動に十分な予算やリソースを割けていないのが現状です。これにより、仕事内容やキャリアの可能性が若者に伝わっていません。
- 古い体質: デジタル化の遅れや、非効率な書類作業など、アナログな働き方が残っていることも、デジタルネイティブ世代にとって魅力的に映らない要因となっています。
自社のホームページがない会社も多々見受けられます。「現代の若者はまずネット検索をする」と言っても過言ではないくらい、ネットが普及している時代ですので、HPがあるというだけでも採用に繋がるかもしれません。
2:建設業界の現状

人手不足はすでに建設業界全体に深刻な影響を与えています。
1. 工期の遅延と工事コストの増大
現場に必要な人員を確保できず、工期が遅れるケースが増加しています。これにより、資材費や人件費が膨らみ、工事全体のコストが増大しています。最終的には、顧客や発注者への負担増にもつながります。
2. 技術・ノウハウの喪失
熟練したベテラン技術者が引退することで、長年培われてきた高度な技術や、現場での判断力といったノウハウが失われつつあります。これは、日本の建設技術力の低下に直結する非常に深刻な問題です。
3. 中小企業経営の圧迫
特に人手不足は、多くの中小建設会社にとって死活問題です。安定した労働力の確保が難しいため、受注できる工事の規模や数が限られ、経営が圧迫されています。
3:人手不足解消に向けて取り組むべき3つの課題
この危機的状況を打開するためには、業界全体が一致団結して、抜本的な改革を進める必要があります。
1. 労働環境の徹底的な改善
まずは、建設業で働く人々の「働きがい」と「働きやすさ」を向上させることが最優先です。
- 週休2日制の導入: 労働基準法の改正もあり、週休2日制を定着させることは急務です。休みを増やすことで、従業員の心身の健康を保ち、プライベートな時間を充実させ、離職率の低下につなげます。
- 給与の見直し: 建設業界は日当という給料体系が一般的です。月給制に移行することにより、従業員が心身ともに安定した生活を送れるようになります。
- 福利厚生の充実: 住宅手当や資格取得支援制度、育児・介護休業制度を充実させることで、従業員が安心して長く働ける環境を整えます。
2024年問題でも課題となった「週休二日制」。我々Z世代は生まれてから大人になる今まで、週休二日が当たり前で生きてきました。民間工事ではまだまだ浸透していない印象で、工事業者さんもまだまだ実現できてはいないと思います。現場は土曜日も稼働しているので、人の配置の問題も重なり、実現するのは中々難しいですよね。
ただ個人的には、週休二日制・月給制を採用するだけでも若者の希望者数は増えるのではないかと考えています。
2. DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進
デジタル技術を積極的に活用し、生産性を向上させることで、人手不足を補うことができます。
- 施工管理のデジタル化: 施工管理アプリやクラウドツールを導入し、現場の進捗管理や書類作成を効率化します。これにより、現場作業員の事務作業を減らし、本来の業務に集中できる時間を増やします。
- BIM/CIMの活用: 3次元モデルを用いて設計から施工までの一連の情報を共有することで、関係者間のコミュニケーションを円滑にし、手戻りを削減します。
- ロボット・AIの導入: 重い資材の運搬、床の研磨など、単純作業や肉体的負担が大きい作業にロボットを導入し、省人化と安全性の向上を図ります。
3. 業界イメージの刷新と多様な人材の確保
建設業の魅力を再定義し、多様なバックグラウンドを持つ人々が活躍できる場を提供します。
- 積極的な情報発信:
- SNSの活用: InstagramやYouTubeで、工事の進捗、社員のインタビュー、完成した建物の美しさなどを発信し、業界のリアルな魅力を伝えます。
- 採用サイトの充実: 会社のビジョンや働き方、社員のキャリアパスを具体的に示し、求職者が安心して応募できるような情報を提供します。
- 女性や外国人労働者の受け入れ促進: 女性専用の休憩室やトイレを設置するなど、女性が働きやすい環境を整備します。また、外国人労働者が安心して働けるよう、日本語教育や生活支援体制を整えることも重要です。
若者にとって、SNSが主流のツールとなっています。そこで発信をすることにより、若者の目に留まり採用に繋がる可能性は大いにあると考えます。前述したように、今は「ネットの時代」なので採用に関しても、ネット戦略がかなり大事になってくるのではないでしょうか。
4:まとめ

建設業の人手不足は、単一の原因で解決できる問題ではありません。労働環境の改善、DXの推進、そして業界のイメージ刷新など、業界全体で包括的に取り組む必要があります。
しかし、これらの改革は、建設業を「きつい・汚い・危険」な業界から、「スマートで魅力的な未来志向の産業」へと変革する大きなチャンスでもあります。実際に私も建設業界で働いていたことがありますが、「地図に残るものに携われる」本当に素晴らしい仕事だと思います。
私たちが住む街や、日々利用するインフラを守るためにも、人手不足を解消し、多くの人が働きたいと思えるような業界に変えていきましょう。