技術士は「技術のプロフェッショナル」の証。その社会的役割と責任とは?

技術士は「技術のプロフェッショナル」の証。その社会的役割と責任とは?

1:はじめに

建設業界をはじめ、日本のインフラを支える多くの技術者にとって、技術士という資格は一つの大きな目標です。単なる専門知識の証明に留まらず、その取得は技術者としての社会的役割と責任を背負うことでもあります。

この記事では、「技術のプロフェッショナル」の証である技術士が、社会の中でどのような役割を担い、どのような責任を果たすべきかについて掘り下げていきます。単にキャリアアップや年収アップのためだけの資格ではない、その本質に迫ります。

2:技術士とは何か?「技術のプロフェッショナル」の定義

技術士法に基づき、科学技術に関する高度な応用能力と専門知識、そして高い技術者倫理を備えていることが認められた国家資格です。科学技術の応用によって生じる様々な課題を解決し、国民経済の発展と国民生活の向上に貢献することを使命としています。

この定義には、単なる知識量だけでは測れない「プロフェッショナル」としての資質が凝縮されています。

  • 高度な応用能力:単に知識を持っているだけでなく、それを現実の複雑な問題に応用し、解決策を導き出す能力。
  • 専門知識:特定の技術分野における深い知識と経験。
  • 高い技術者倫理:科学技術の進歩が社会に与える影響を正しく理解し、安全、環境、公共の利益を最優先に行動する姿勢。

技術士は、この3つの要素を高いレベルで兼ね備えていることを国に認められた存在なのです。

技術士の部門

なんと、技術士には全21の部門があります。一覧は下記の通りです。

  • 機械部門
  • 船舶・海洋部門
  • 航空・宇宙部門
  • 電気電子部門
  • 化学部門
  • 繊維部門
  • 金属部門
  • 資源工学部門
  • 建設部門
  • 上下水道部門
  • 衛生工学部門
  • 農業部門
  • 森林部門
  • 水産部門
  • 経営工学部門
  • 情報工学部門
  • 応用理学部門
  • 生物工学部門
  • 環境部門
  • 原子力・放射線部門
  • 総合技術監理部門

単に「技術士」といっても、実はこれだけの分野に分かれているのです。

3:技術士が担う「社会的役割」

技術士は、多岐にわたる分野で重要な役割を担っています。

役割1:社会の安全・安心を守る技術の守護者

建設、機械、電気電子、上下水道など、技術士の活躍の場は私たちの生活に欠かせないインフラそのものです。例えば、地震に強い橋梁の設計、安定した電力供給システムの構築、安全な水の確保など、社会基盤の安全・安心は彼らの専門知識と判断力に支えられています。

技術士は、設計や計画の段階でリスクを予測し、未然に事故やトラブルを防ぐリスクマネジメントの役割を担っています。

役割2:技術コンサルタントとしての課題解決者

公共事業や大規模なプロジェクトにおいて、技術士は「技術コンサルタント」として不可欠な存在です。発注者(国や地方自治体など)の立場に立ち、プロジェクトの計画策定、技術的な助言、設計の評価などを行います。

これにより、プロジェクトの適正性を確保し、無駄なコストや時間を削減します。技術士の判断が、税金の適正な使用とプロジェクトの成功に直結しているのです。

役割3:次世代技術の担い手・イノベーションの推進者

AI、IoT、ロボット技術など、社会は急速な技術革新の時代を迎えています。技術士は、これらの最先端技術を既存の分野にどう応用し、より良い社会を築いていくかを考える役割も担っています。

例えば、建設分野ではBIM/CIMの導入、情報通信分野では次世代通信技術の開発など、技術士はイノベーションを現場レベルで推進するキーパーソンなのです。

4:技術士が背負う「専門家としての責任」

社会的役割を果たす上で、技術士には単なる「プロ」を超えた責任が求められます。

責任1:技術者倫理の遵守

技術士法には「技術士の義務」が明確に定められています。その中でも特に重要なのが技術者倫理の遵守です。

  • 公益確保の義務:公共の安全、環境保全、人々の健康・福祉を最優先に考え、行動する。
  • 信用失墜行為の禁止:技術士としての品位を保ち、信頼を損なうような行為は行わない。
  • 秘密保持の義務:業務上知り得た秘密を正当な理由なく漏らさない。

例えば、建物の耐震基準を満たさない設計を依頼された場合、技術士は公益確保の義務を優先し、その依頼を拒否しなければなりません。この倫理観が、技術士の信頼性の根幹を成しているのです。

責任2:社会への説明責任

大規模プロジェクトや新たな技術の導入においては、その目的、安全性、リスクなどについて社会に対して丁寧に説明する「説明責任」も重要です。

技術士は、専門用語を避け、一般の人々にも分かりやすく解説する能力が求められます。この責任を果たすことで、社会の理解と信頼を得ることができます。

5:技術士は、なぜ「技術のプロフェッショナル」の証なのか?

技術士は、これらの役割と責任を果たすための「証明書」に他なりません。それは単に特定の試験に合格したという事実だけでなく、高度な専門性と倫理観を兼ね備え、社会のために貢献する意思があることを国から認められたこと意味します。

技術士の資格は、個人にとってはキャリアの集大成であり、社会にとっては安心と信頼の象徴なのです。

6:まとめ

技術士は、単なる知識の証明ではなく、社会の発展と人々の安全を守るための重い役割と責任を背負っています。

「技術のプロフェッショナル」として、高度な応用能力と倫理観をもって社会の課題解決に貢献し、そしてその専門性を常に磨き続けること。それが、技術士に求められる本質です。

技術者としての自身の成長だけでなく、社会全体に貢献したいと考える方にとって、技術士は挑戦するに値する最高の資格と言えるでしょう。

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