人手不足解消の切り札! 建設業のための省力化投資補助金活用ガイドとおすすめ製品
人手不足解消の切り札! 建設業のための省力化投資補助金活用ガイドとおすすめ製品
はじめに:建設業界が直面する「2024年問題」とDXの必要性

建設業界は、長年にわたり深刻な人手不足という課題に直面しています。特に、2024年4月1日から適用された時間外労働時間の上限規制は、この問題をさらに加速させ、「2024年問題」として業界全体に大きな影響を与えています。この問題は、単なる労働時間の削減だけでなく、若手技術者の確保やベテラン技術者の高齢化、生産性の低迷といった、構造的な課題を浮き彫りにしています。
このような状況を打開するためには、従来の働き方からの脱却が不可欠です。そこで注目されているのが、建設DX(デジタルトランスフォーメーション)です。最新のテクノロジーを活用して、業務プロセスを根本から見直し、生産性を飛躍的に向上させる取り組みです。しかし、DX推進には多額の投資が必要となるため、特に中小企業にとっては大きなハードルとなっています。
そこでぜひ活用したいのが、政府が推進する「中小企業省力化投資補助金」です。この補助金は、人手不足の解消につながるIoTやロボット、などの「省力化製品」の導入費用を一部補助することで、中小企業のDXを強力に後押しするものです。この記事では、建設業の皆様がこの補助金を最大限に活用できるよう、補助金の概要から具体的な製品例、申請のポイントまで、徹底的に解説します。
目次
省力化投資補助金とは?建設業が対象となる理由
省力化投資補助金は、人手不足に悩む中小企業が、労働生産性を向上させるための設備投資を支援する目的で創設されました。建設業は、その業務の性質上、特に人手に依存する部分が多く、省力化・自動化のニーズが高い業界です。
この補助金は、「カタログ型」と「一般型」の2つの類型があります。
- カタログ型: 補助金事務局が事前に登録した「製品カタログ」から、汎用性の高い製品を選んで導入する場合に利用できます。申請手続きが比較的簡易で、採択後の導入もスムーズに進められるのが特徴です。
- 一般型: 個別の業務内容や課題に合わせて、オーダーメイドのシステムや設備を導入する場合に利用できます。補助上限額が高く、より大規模な投資に対応できる点が魅力です。
建設業においては、測量、設計、施工、資材管理など、多岐にわたる工程で省力化製品の導入が可能です。この補助金は、労働力不足の解消だけでなく、品質向上、工期短縮、安全性の確保といった、建設現場全体の課題解決に直結します。
建設業向けのおすすめ省力化製品カタログ

省力化投資補助金の対象となる建設業向け製品は、多岐にわたります。ここでは、特に現場の生産性向上に貢献する、代表的な製品カテゴリと具体的な製品例をご紹介します。(2025年9月現在)詳しく知りたい方は公式サイトの製品カタログをご覧ください。
(公式サイト:製品カタログ https://shoryokuka.smrj.go.jp/catalog/product_catalog/)
清掃ロボット
- 清掃員が作業していた清掃業務を自動で動く清掃ロボットが担います。
- 人や障害物を避けながら、廊下やロビーなどの床面を清掃をすることが可能です。
測量機(自動視準・自動追尾機能付き高機能トータルステーション)
- 測量業務において、作業者による遠隔操作、内蔵センサーによる追尾や視準が自動になり、ノンプリズム機能(ターゲットのプリズム不要)となるなど、省力化が見込めます。
- 従来まで2名以上で行っていた測量業務において、同製品の持つ機能により作業者が1名に削減され、自動的にターゲットを追尾・視準して測量することができるようになり、作業工数の削減が見込めます。
バランサ装置
- 重量物の搬送業務が多い現場においても、この機器を活用することで、ロボット搬送など自動化が困難な環境下での作業効率化が期待されます。さらに、人手不足の解消や作業員の負担軽減にも寄与します。
- 本機器は省スペースで設置可能で、クレーンやフォークリフトが使えない現場でも活用できます。容器の傾斜作業や袋詰め品の搬送、加工機械へのワーク取付など、多様な作業で高い省力化効果を発揮します。
地上型3Dレーザースキャナー
- 視通可能な計測範囲全周の地物や構造物の形状を一度に詳細な点群データとして取得することができます。この装置は、従来のトータルステーション(TS)と比較して大幅な作業効率化を実現します。
- 複雑な地形や視界が限られた都市部の狭い空間でも正確なデータ取得が可能で、建設現場や災害復旧現場での計測作業を効率的かつ迅速に行えるため、大幅な省力化が見込めます。
GNSS測量機(RTK)
- 視通が困難な現場でも効率的な測量が可能な装置です。例えば、広範囲の測量を行う建設現場や、複雑な地形で視通確保が難しい山間部の測量作業において活用できます。この機器を活用することで、移動局の位置を即時に求められるため、従来のトータルステーション(TS)と比較して作業時間を大幅に短縮できます。
- 1名の作業員で測量機を次々と移動させながら効率的に作業を進められるため、人手不足の解消や作業負担の軽減にも寄与することで、生産性向上および省力化効果が期待できます。
マシンコントロール・マシンガイダンス機能付ショベル
- 効率的で精度の高い施工が求められる現場で活用できる装置です。広範囲の掘削が必要な土木工事や、複雑な地形で正確な作業が求められる施工現場に適しています。
- 測量作業が軽減されることで、少人数でも迅速に作業を進められるほか、設計データに基づき半自動制御で掘削を行うため、高精度な作業を実現します。これにより、施工時間の短縮や作業効率の向上が期待されます。
シンダーコンクリート解体機
- 狭いスペースや作業人数が限られる現場での解体作業に適しています。コア穴とシリンダーの間に鋼板を挟まずに割裂作業が可能で、作業工程を簡素化し、省力化と効率化を実現します。
- 作業時間の短縮や人手不足の解消が期待できるうえ、騒音や振動が少ないという特徴も持ち合わせています。
チルトローテータ付ショベル
- 多様な作業が求められる建設や土木工事の現場で活用できる装置です。構造物付近や狭小箇所での作業が容易になるため、効率的な施工が可能です。
- アタッチメントの迅速な交換や高精度な作業をサポートし、少人数でもスムーズに作業を進められるため、作業時間の短縮と省力化が期待されます。
建設現場作業ロボット(鉄筋組立作業ロボット)
- 配筋や結束などの鉄筋作業を自動化し、省力化を実現します。これにより、作業時間の短縮や人手不足の解消が期待できます。
- 重い鉄筋を扱う負担を大幅に軽減し、安全性を向上させるとともに、作業効率化も効果的にサポートします。
鉄筋自動曲装置
- 建築や土木工事における鉄筋加工の効率化が求められる現場で活用できます。特に、ビルの柱・梁、橋梁などの鉄筋を用途に応じて正確に曲げる必要がある現場に適しています。
- 自動制御による加工機能を活用することで、熟練工でなくても精度の高い鉄筋加工が可能となり、作業者の負担軽減と作業時間の短縮が期待されます。
パワーアシストスーツ
- 重量物の持ち上げや運搬作業が発生する現場で活用できる装置です。荷物の上げ下ろしや搬入搬出作業の負担軽減に適しています。
- 装着することで、作業者の腰への負担を軽減し、持ち上げ作業の時間短縮や連続作業時間の延長が可能になります。これにより、作業効率の向上と労働負担の軽減が期待されます。
産業用小ロット印刷対応デジタル印刷機(フラットベッドタイプ/ロールタイプ)
- 多品種・小ロットの印刷が求められる現場で活用できます。例えば、店舗内装用のサインやディスプレイ製作、看板や広告物の製作、販促物の印刷業務など、少量多品種のオーダー対応が多い現場に適しています。
- 従来のスクリーン印刷のように製版が必要ないため、短納期での印刷が求められる案件や、試作品・限定品の製作現場でも効果を発揮します。印刷版の作成や色合わせ作業が不要となり、誰でも簡単に印刷作業を行うことができます。
RFIDによる一括読み取りシステム
- 対象物に貼付されたRFタグを非接触かつ視認不要で一括読み取り可能とすることにより、従来のバーコードや二次元コードを用いた読み取り作業に比べて大幅な省力化を実現します。1点ずつスキャンを行う必要があった従来手法と比較して、作業時間の短縮効果は対象業務により異なるが、概ね2倍~10倍程度の作業効率向上が期待されます。
- 人的ミスの軽減や作業負荷の平準化にもつながり、業務の標準化と生産性の向上に寄与します。
申請から交付までの流れ

補助金の申請手続きは、初めての方には複雑に感じられるかもしれません。以下に、一般的な流れをまとめました。
- GビズIDの取得: 補助金申請は電子申請となるため、事前にGビズIDプライムアカウントを取得しておく必要があります。
- 事業計画の策定: 導入したい製品を選定し、その導入によってどのような省力化効果が得られるかを具体的に盛り込んだ事業計画書を作成します。
- 申請: 策定した事業計画書と必要書類を、オンラインの電子申請システムを通じて提出します。
- 審査・採択: 提出された事業計画は、外部有識者による審査を受け、採択が決定されます。
- 交付決定: 採択後、正式な交付申請を行い、補助金の交付が決定されます。
- 製品導入・実績報告: 交付決定後に製品を導入し、事業完了後に実績報告書を提出することで、補助金が支払われます。
まとめ:省力化投資補助金で建設業の未来を切り拓く

建設業界の「2024年問題」は、業界全体が変革を迫られる大きな転換点です。しかし、この危機は、最新技術を導入し、より効率的で魅力的な働き方へと進化する絶好の機会でもあります。
中小企業省力化投資補助金は、この変革を後押しするための強力な支援策です。測量、施工、情報管理など、あらゆる工程で活用できる省力化製品が多数用意されています。
この補助金を活用することで、単に人手不足を補うだけでなく、
- 熟練工の技術を平準化し、若手技術者の育成を促進
- 危険な作業を自動化し、現場の安全性を向上
- 業務効率を高め、残業時間を削減し、働きやすい環境を整備
といった、多面的なメリットを享受できます。
ぜひこの機会に、自社の課題を洗い出し、補助金を活用した省力化投資を検討してみてください。未来の建設業界を担う、持続可能な経営基盤を構築するための第一歩となるでしょう。