あなたの農地はどちら?「青地」と「白地」の違いでわかる利用の可能性
あなたの農地はどちら?「青地」と「白地」の違いでわかる利用の可能性

「農地を買いたいけれど、『青地』と『白地』って一体何?」 「自分の持っている農地が、どういう区分なのかわからない」 「農地を売却したり、農地以外に転用したりしたいけど、許可が下りるか不安」
このような疑問や不安を抱えていませんか?
農地の売買や転用、活用を検討する際、必ず耳にするのが「青地」と「白地」という言葉です。これらは農地の用途や転用のしやすさを分ける重要な区分で、知っているかどうかであなたの計画の実現可能性が大きく変わってきます。
別記事:農地転用ってなに?
この記事では、農地の専門家である筆者が、「青地」と「白地」の違いをわかりやすく解説します。それぞれの特徴やメリット・デメリット、そしてどちらに該当するのかを確認する方法まで、徹底的に解説します。土地の購入などのお考えの方にご参考にしていただけると幸いです。
目次
そもそも農地はなぜ区分されるの?
日本の農地は、食料自給率の維持や優良な農地の確保、農業経営の安定化を目的に、「農地法」という法律によって厳しく管理されています。この法律に基づき、農地は農業上の優位性や土地利用の状況に応じて、いくつかの区分に分けられます。
この区分のうち、特に重要なのが「農業振興地域」という概念です。
- 農業振興地域内農用地区域内農地(青地):将来にわたって農業上の利用を確保すべき土地。基本的に転用不可。
- 農業振興地域内農用地区域外農地(白地):基本的に転用が可能。
これらは通称「青地」と「白地」と呼ばれ、それぞれ許可や規制の内容が大きく異なります。
農地の「青地」と「白地」の違いとは?

「青地」と「白地」は、農地が持つポテンシャルと将来性を理解する上で最も重要なキーワードです。それぞれの特徴を具体的に見ていきましょう。
1. 農用地区域:通称「青地」
特徴: 「青地」とは、市町村が指定する農用地区域内にある農地を指します。この土地は、「今後も農業のために使うべき土地」として非常に厳格な規制がかけられています。
メリット:
- 農業経営の安定化:青地として指定されることで、農地として守られ、安定した農業生産を継続できます。
- 税制優遇:都市計画税や固定資産税の優遇措置が受けられる場合があります。
デメリット(土地活用・転用を考える場合):
- 転用が極めて困難:原則として、農地以外の目的での利用は認められていません。住宅や駐車場、資材置き場などへの転用はほぼ不可能です。
- 売買の制約:農地法上の許可(3条)が必要な上、農業を目的とする買い手を探す必要があります。
こんな人におすすめ: 「代々受け継いだ農地で、これからも農業を続けていきたい」 「農業生産を基盤に、長期的な経営を考えている」
青地は、まさしく「農業のための土地」です。この土地を有効活用するには、農地のまま、農業として利用する前提で計画を立てる必要があります。
2. 農業振興地域:通称「白地」
特徴: 「白地」とは、農業振興地域内にあり、かつ農用地区域(青地)に指定されていない農地を指します。青地ほどの厳しい規制はなく、転用のハードルが比較的低いのが特徴です。
メリット(土地活用・転用を考える場合):
- 転用の可能性:農地転用許可を得れば、住宅や店舗、駐車場などへの転用が可能です。
- 活用の多様性:農地法上の手続きを経れば、ソーラーパネルの設置や資材置き場としての利用など、農業以外の目的で活用できる可能性があります。
- 売買のしやすさ:非農家への売却も視野に入れることができるため、青地よりも買い手が見つかりやすい傾向があります。
デメリット:
- 転用には時間と費用がかかる:転用が比較的容易とはいえ、農地法上の許可申請や手続きには時間と専門知識が必要です。また、農地転用許可が必ず下りるわけではありません。
- 優遇措置が少ない:青地に比べて、固定資産税や相続税の優遇が少ない場合があります。
こんな人におすすめ: 「農地を相続したが、農業を続ける予定がない」 「農地を宅地として売却し、現金化したい」 「将来的に農地を駐車場や賃貸物件として活用したい」
白地は、まさに「活用の可能性を秘めた土地」と言えます。ただし、転用には適切な手続きが不可欠です。
あなたの農地は「青地」か「白地」か?見分ける方法
自分の農地がどちらに該当するのかは、以下の方法で簡単に確認できます。
- 市町村役場の担当課に確認する 最も確実な方法です。市町村の農業委員会や農業振興課、都市計画課に問い合わせてみましょう。地番を伝えて「この土地は農用地区域(青地)に該当しますか?」と尋ねれば、教えてもらえます。
地域によってですが、回答を貰えるまで数日~数週間かかる場合があります。 - eMAFF農地ナビ 農林水産省が出しているサイトです。こちらでも確認することが可能です。
農地転用の第一歩「農振除外」とは
もしあなたの農地が「青地」だったとしても、絶対に転用できないわけではありません。例外的に、「農振除外」という手続きを踏むことで、「白地」に移行できる可能性があります。
農振除外とは、農業振興地域の整備計画から特定の土地を除外し、青地から白地に変更するための手続きです。この手続きが認められると、農地転用許可の申請が可能になります。
ただし、この農振除外は、農業振興を目的とした計画を根本から見直すことになります。そのため、要件が厳しく、時間もかかります。具体的な要件や手続きは自治体によって異なりますが、一般的には、以下のような状況で認められることがあります。
- 農用地区域以外の土地をもって代えることが困難であり、利用が必要性かつ適当であること。
- 地域計画の達成に支障を及ぼさないこと。
- 農用地区域内における農地の集団化、農作業の効率化などにおいて支障を及ぼすおそれがないこと。
- 農用地区域内の土地改良施設の有する機能に支障を及ぼすおそれがないこと。
- 土地改良事業完了から9年以上経過した土地であること。
- 担い手に対する農用地の利用集積に支障を及ぼさないこと。
- 他法令の許可見込みがあること。
農振除外の手続きには、専門知識と多くの時間が必要です。まずは市町村の担当課に相談し、ご自身のケースで農振除外が可能かどうかを確認することから始めましょう。専門家の行政書士に相談する方法もあります。
まとめ:あなたの農地、活用の第一歩は「区分を知ること」

農地の「青地」と「白地」は、一見すると単なる法律上の区分に過ぎないように思えます。しかし、その違いは、農地が持つ可能性の大きさを物語っています。
- 青地:農業を継続し、優遇措置を享受したい人向けの「農業のための土地」。例外的な手続き(農振除外)で活路が見いだせる可能性もある。
- 白地:転用や売却を通じて、新たな活路を見出したい人向けの「可能性を秘めた土地」。
まずはあなたの農地がどちらに該当するのかを正確に把握すること。これが、あなたの農地を最も有効に活用するための第一歩です。
もし、ご自身の農地が「白地」であり、転用や売却を検討しているなら、ぜひ一度、専門家にご相談ください。複雑な手続きも、専門家の助けがあればスムーズに進められます。