【建設業許可の要件】財産要件の500万円。無い場合は?融資でもいい?行政書士が徹底解説!
【建設業許可の要件】財産要件の500万円。無い場合は?融資でもいい?行政書士が徹底解説!

「建設業許可を取りたいけど、500万円なんて手元にない…」「融資で借りたお金でも大丈夫なの?」と不安に思っている方も多いでしょう。
結論からお伝えすると、500万円の資金を手元に現金で用意する必要はありません。金融機関からの融資も要件を満たす方法の一つです。
この記事では、建設業許可の取得を考えている方のために、建設業許可に特化した行政書士が財産的基礎(500万円の要件)の具体的なクリア方法について、徹底的に解説します。資金調達の不安を解消し、スムーズに許可取得を目指しましょう。
目次
1|建設業許可の「財産的基礎」とは?

建設業許可を取得するためには、主に以下の5の要件を満たす必要があります。
- 経営業務の管理責任者(経管)がいること
- 営業所技術者(旧専任技術者)がいること
- 誠実性があること
- 欠格要件に該当しないこと
- 財産的基礎または金銭的信用があること
このうち、資金面での要件が、5番目の「財産的基礎」の要件です。
一般建設業許可の財産要件
初めて建設業許可(一般建設業)を取得する場合に求められる財産要件は、「500万円以上の自己資本または資金調達能力」があることです。
この「500万円」は、単に現金が500万円あれば良いという話ではなく、以下のいずれかの方法で証明する必要があります。
- 自己資本(純資産)が500万円以上であること
- 預金残高などで500万円以上の資金調達能力を証明すること
なぜ財産要件が求められるのか
一体なぜこのような要件が求められるのか。それは以下のような理由があります。
1. 工事の確実な完成を担保するため
建設工事は、請負金額が高額で、工期も長く、途中で予期せぬトラブルやコスト増が発生するリスクがあります。財産要件は、「もし工事の途中で予期せぬ事態が発生し、追加の資金が必要になったとしても、請け負った建設業者がそれを賄い、最後まで工事を完成させられるだけの経済的な体力があるか」を審査するためのものです。
この要件を満たすことで、業者が途中で資金繰りに行き詰まり、工事を中断・放棄してしまうリスクを未然に防ぎ、契約の確実な履行を担保します。
2. 発注者や下請業者を保護するため
もし財産的な基礎がない業者が工事を請け負い、倒産や夜逃げなどで工事を放棄した場合、大きな被害を被るのは、その業者に工事を依頼した発注者(施主)や、仕事をしたのに代金が支払われない下請業者です。
財産要件は、建設業者が倒産などによって関係者に損害を与える事態を防ぐため、倒産しにくい安定した経営基盤を持っているかを客観的に判断する基準となります。これにより、建設工事という経済活動における信頼性と健全性を確保しています。
要するに、財産要件は、建設業者が一時的なブームではなく、継続して健全な事業を営むための「体力」を持っているかを確認し、業界全体の信頼を守るために設けられているのです。
2|最も簡単な証明方法:貸借対照表の「純資産」でクリアする

では、一体どうやって証明すればよいのでしょうか。
最も理想的で簡単な証明方法は、会社の財務状況を示す「貸借対照表」の「純資産の部」に500万円以上の金額が記載されていることです。
純資産とは?
純資産は、以下の式で求められます。
純資産 = 資産 - 負債
これは、会社が保有する財産(資産)から、借金などの返済義務(負債)を差し引いた、返済義務のない本当の会社の資本を意味します。
貸借対照表の「純資産の部」の合計額が500万円以上あれば、それだけで財産要件はクリアとなり、預金残高証明書などを別途提出する必要はありません。
- 提出資料の例: 申請直前の確定した決算書(貸借対照表)
設立したばかりで純資産が500万円ない場合は?
会社を設立したばかりで、純資産が500万円に満たない場合は、この方法で証明することはできません。その場合は、次に解説する「資金調達能力」による証明が必要です。
3|初めての許可申請で最も多い:預金残高で「資金調達能力」を証明する

会社の純資産が500万円に満たない場合や、個人事業主で初めて許可を取得する場合、「預金残高が500万円以上ある」ことを証明することで、財産要件をクリアできます。
これは、「必要な時にいつでも500万円を用意できる資金調達能力がある」とみなすための証明方法です。前述した、財産要件が必要な理由と合致すると思います。
預金残高証明書の取得方法
証明に使うのは、金融機関が発行する「残高証明書」です。
証明日: 建設業許可申請をする日の1ヶ月以内(自治体によって有効期限が異なります)
例えば、10月15日に申請する場合、9月15日以前に取得した残高証明書は有効ではありません。
融資(借入金)でも「500万円」はクリアできるのか?
皆さまが最も気になる点、「融資で借りたお金(借入金)」をこの残高証明に使って良いか、という問題について解説します。
結論から言うと、融資で借りたお金であっても、預金口座に振り込まれていれば、そのお金は残高証明に使えます。
なぜ融資で借りたお金でOKなのか?
融資で借りたお金は、会計上は「負債」(借入金)であり、純資産を構成するものではありません。しかし、建設業許可の財産要件では、以下の考え方をとります。
- 純資産で証明する場合: 返済義務のない真の資本(純資産)が500万円あること。
- 預金残高で証明する場合: 許可取得後も事業を継続し、契約を履行するための「機動的な資金調達能力」が500万円あること。
金融機関からの融資は、経営者個人の資産ではなく、「会社の信用」に基づいて調達された資金です。したがって、この融資が口座に入り、いつでも事業に使える流動資産として存在していることを証明できれば、「資金調達能力の証明」として認められるのです。
融資でクリアする場合の注意点
融資で残高をクリアする際は、以下の点に特に注意が必要です。
- 融資の実行タイミング:
- 残高証明を予定している日(例:申請日の1ヶ月前)に、確実に口座に500万円以上の金額が入っている必要があります。
- 負債としての記載:
- 融資で資金調達した場合、決算書には当然ながら「借入金」として負債の部に計上されます。この負債の増加は、純資産を減らすことにはなりませんが、会社の信用度を測る一つの要素となります。
4「特定建設業許可」の財産要件はさらに厳しい

ここまでは一般建設業許可の要件を解説しましたが、より大規模な工事(下請けに出す工事の金額が5,000万円以上)を請け負うことができる「特定建設業許可」の財産要件は、一般建設業よりも格段に厳しくなります。
建設業許可を初めて取得する場合、大抵は一般建設業許可かと思いますのであまり関係ないかもしれませんが、これからの事業拡大と共に必要になる可能性もあるので覚えてきましょう。
一般建設業許可と特定建設業許可の違いについて解説した記事はこちら→特定建設業許可と一般建設業許可の違いを解説!最適な許可はどっち?
特定建設業許可では、単なる500万円の資金調達能力ではなく、以下のすべての要件を満たす必要があります。
| 要件 | 求められる金額 |
| ① 欠損の額がないこと | 欠損の額が資本金の20% 以上を超えないこと |
| ② 流動比率が | 75%以上であること |
| ③ 資本金が | 2,000万円以上であること |
| ④ 純資産の額が | 4,000万円以上であること |
特定建設業の要件は、融資で一時的に残高を増やしてクリアできるものではなく、決算書上の厳格な財務指標が求められます。
5|財産要件をクリアするための具体的アクションプラン

初めて建設業許可を取得する場合の、財産要件クリアのための具体的な手順をご紹介します。
ステップ1:現状の財務状況を確認する
まずは最新の決算書(または事業主の確定申告書)を確認し、以下のいずれに該当するかチェックしましょう。
- 法人の場合: 貸借対照表の純資産が500万円以上あるか?
- 個人事業主の場合: 事業用の預金残高は500万円以上あるか?
ステップ2:500万円の証明方法を決める
純資産でクリアできない場合は、「預金残高証明」で証明することになります。
- 手元資金でクリアできる場合: 預金残高証明を取得する準備をします。
- 資金が不足している場合: 融資や増資(出資の受け入れ)、または事業主や役員からの借入金などにより、証明日までに500万円以上の残高を確保します。
ステップ3:融資などの資金調達を行う際の注意点
融資で資金調達する場合、行政書士は資金繰りのアドバイスはできませんが、許可申請の観点から以下の点を提案します。
| 対策 | 詳細 |
| 「短期借入金」として計上 | 融資で得た資金は、会計上、必ず「短期借入金」などの負債として正しく計上します。 |
| 不自然な入出金を避ける | 融資実行後、証明日(残高証明の基準日)を挟んで、すぐに全額を引き出すなど、資金の存在を一時的なものと見なされる行為は避けてください。 |
| 証明日の設定 | 申請日を逆算し、確実に500万円以上の残高がある日を証明日として設定します。 |
6|まとめ

建設業許可の一般建設業で求められる財産要件の「500万円」は、貸借対照表の純資産が500万円以上であるか、または預金残高などで500万円以上の資金調達能力があることのいずれかでクリアできます。
特に初めて許可を取得する方や資金が不足している方にとって、金融機関からの融資は、預金残高による「資金調達能力」の証明として有効な手段です。
この「財産要件」をスムーズに突破して建設業許可を取得し、さらなる事業拡大を目指しましょう。
これから建設業許可の取得をお考えの方に、少しでも参考にしていただけると幸いです。



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