【難しい理由】農地転用許可はなぜ「難しい・ハードルが高い」のか?専門家である行政書士が徹底解説!
【難しい理由】農地転用許可はなぜ「難しい・ハードルが高い」のか?専門家である行政書士が徹底解説!

「実家の田んぼに家を建てたい」「使っていない畑を駐車場にしたい」
土地活用やマイホームの計画を実現する上で、最初に立ちはだかるのが農地転用許可という手続きです。
農地転用とは、農地を農地以外の目的で利用する行為を指し、この行為を行うためには、都道府県知事等の許可を得る手続きが必要です(農地法第4条または第5条)。これが農地転用許可手続きです。
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農地は、日本の食料生産の根幹であり、法律によって厳しく守られています。そのため、「申請さえすれば許可が下りるだろう」という安易な考えでは、許可が下りません。この手続きは、多くの方が想像する以上に複雑で、難解で、そしてハードルが高いのです。
これから農地転用を検討している方、あるいは「自分で手続きをやってみようか」と悩んでいる方へ。
そんな方に向け、行政書士の視点から「農地転用許可がなぜ難しいのか」その三つの大きな壁を徹底的に解説します。
1|第1の壁:法律の原則と「守られる農地」の存在

農地転用許可の難しさは、まず農地法という法律の根幹にあります。この「許可」が簡単に下りない理由がここにあります。
農地法の「守りの姿勢」
農地法は、優良な農地の確保と効率的な利用を目的としています。つまり、国は農地は守っていくもので、できる限り減らしたくないという強い意志を持っており、農地転用許可はあくまでも「例外的な措置」として扱われます。
そのため、申請時には転用する必要がある相当な理由も提出する必要があります。
申請地が、農業生産に適した優良な農地であると判断されればされるほど、許可が下りる可能性は下がります。この「守りの姿勢」が、許可基準を厳格化させる最大の理由です。
農地の立地基準という名の「関所」
農地転用許可には「立地基準」と「一般基準」という二つの基準があり、一般的には以下の基準で許可の可否を判断します。
| 区分 | 特徴 | 許可の難易度 |
| 農用地区域内農地 | 農業振興地域内の特に優良な農地。 | 原則不許可。農振除外手続きが必須。 |
| 甲種農地 | 市街化調整区域内の良好な営農条件を備えた優良農地。 | 原則不許可。 |
| 第1種農地 | 良好な営農条件を備えた優良農地。 | 原則不許可。 |
| 第2種農地 | 農業生産性が低いが周辺農地がある。 | 周辺に代替地がない場合、条件付きで許可の可能性。 |
| 第3種農地 | 市街地内や公共施設が整備された農地。 | 比較的容易に許可の可能性が高い。 |
もしあなたの土地が「農用地区域内農地」や「甲種農地」「第1種農地」に該当する場合、転用計画を練る以前に、まずその土地の格付けによってハードルが非常に高くなります。
特に「農用地区域内農地」の場合、転用以前に「農振除外」という、非常に時間と労力のかかる行政手続きをクリアしなければ、農地転用許可の申請すらできないのです。しかも、農振除外申請は必ず通るものではありません。もし該当する場合は、転用計画の見直しも視野に入れましょう。
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2|第2の壁:膨大な書類と「計画の確実性」の証明

「書類なんて集めればいい」と思われがちですが、農地転用許可手続きにおける書類の多さと複雑さは、ご自身での手続きを検討している方の多くが挫折するポイントです。
膨大な必要書類の数々
農地転用許可の申請には、基本的に数十種類に及ぶ書類が必要です。「申請書」と一言で言っていますが、実際にはその添付資料が膨大にあります。
例として、一般的な必要書類の一部を挙げます。(市町村によって異なります)
- 許可申請書
- 土地の登記事項証明書、公図
- 事業計画書:転用後の利用目的、工事計画、資金計画などを詳細に記述。
- 資金証明書類:銀行の残高証明書など、計画を遂行する資金があることを証明。
- 代替地検討理由書:なぜ他の土地ではだめなのかを説明。
- 位置図、配置図、平面図、造成計画図(造成を行う場合)
- 土地改良区の意見書:水路を管理する水利組合からの意見書
- その他法令に抵触する場合、他法令の許可証
その他、工事の見積書なども必要になってきます。転用目的、市町村によって異なります。逆に言えば、もちろん煩雑ですが、求められる情報や書類が比較的簡単な自治体もあります。事前に必ず農業委員会に問い合わせましょう。
書類作成の煩雑さと「矛盾の排除」
ただ書類を集めるだけでなく、これらの書類には専門的な知識が求められます。特に難しいのが、以下の点です。
- 図面の正確性:申請する範囲、構造物の配置、既存の農道・水路の位置などを正確に図面に落とし込む必要があります。
- 計画の信憑性:「この土地に本当にこの施設を建てるのか?」という計画の確実性を、資金力や工事のスケジュール、利用計画などから客観的に証明しなければなりません。
- 法令との整合性:農地法だけでなく、都市計画法、建築基準法、水利権など、関係する全ての法令に抵触しないことを証明する義務があります。
もし、提出書類の記述に少しでも矛盾があったり、必要な証明が欠けていたりすると、書類補正の指示が入り、許可までの時間が大幅に延びてしまいます。行政側は完璧な書類を求めるため、その正確性のレベルが非常に高いのです。
3|第3の壁:現地調査と「実現性」の徹底審査

農地転用許可手続きで最も見落とされがちなハードルが、現地調査による物理的な実現性のチェックです。書類上の計画がいくら素晴らしくても、現地で実現不可能と判断されれば、許可は下りません。
市町村・農業委員会による厳格なチェック
申請を受け付けた市町村の農業委員会は、必ず現地に赴き、以下の重要事項を徹底的に確認します。
① 物理的な建設の可否
- 接道の確認:計画通りに車両の出入りが可能か。特に、田んぼと公道との間に大きな段差がある場合、その段差解消工事が技術的に可能か、または安全上の問題がないか。
- 水路・排水対策:申請地を通る既存の農業用排水路を埋め立てる必要がある場合、その水路の管理者(土地改良区など)の同意を得ているか、代替排水路の計画が適切か。排水先の確保はできているか。
- 地盤の状況:住宅などを建築する場合、軟弱地盤ではないか、計画されている工事で周辺に悪影響が出ないか。
② 周辺農地への影響の排除
- 営農環境への配慮:転用後の建物や施設が、周辺農地の日照を妨害しないか、または粉塵、騒音、臭気などで農作業に支障をきたさないか。
- 農業用施設の保全:農道やため池など、周辺の農業用施設の機能維持に影響がないか。
農業委員会は、多くが地域の現役農家や農業関係者です。彼らは、自分の地域の営農環境を守るという強い使命感を持っています。形式的な書類だけでなく、「この計画が実現したら、隣の畑の作業に本当に支障が出ないのか?」を現実的なな視点で審査するため、計画の詰めが甘いと即座に指摘が入ります。
計画変更の泥沼化
現地調査で「段差の解消方法が不適切」「排水路の同意が得られていない」といった問題が指摘されると、計画の変更が必要になります。
- 計画変更⇒図面の修正⇒新たな同意書の取得⇒再度の現地確認依頼
と、何度も繰り返される可能性があり、許可を得るまでの期間が長期化する大きな原因となります。
4|スムーズな実現への道

農地転用許可手続きのハードルは、単に書類を集める作業ではなく、「農地法をクリアしつつ、都市計画法や建築基準法に適合し、かつ周辺農地や水利権者に配慮した、物理的に実現可能な計画」を、完璧な書類で証明するという点にあります。これらが「難しい」「ハードルが高い」と言われる理由なのです。
このプロセスを全て自分で行うことは、知識、時間、労力、そして精神的な負担の観点から非常に困難であり、途中で断念してしまうケースも少なくありません。
法人、また個人の方であっても、本業をしながらこれらを全て行うのはかなり難しいです。
貴重な時間と労力を、書類作成や行政との協議に費やすよりも、転用後の土地活用などに集中した方が圧倒的に効率が良いです。
弊所が行っている「農地転用許可申請代行サービス」

弊所は、そんな方のお力になれるよう「農地転用許可申請代行サービス」を行っております。(群馬県)※その他地域はご相談ください。
弊所に申請代行をご依頼いただくことで、これらの複雑な問題を解決し、あなたの計画をスムーズに実現へと導くことができます。
- 専門知識: 農地法、都市計画法などの複雑な法令を熟知した行政書士が、難易度の高い案件も許可の可能性を見極めます。
- 書類作成: 膨大な申請書類や図面作成を全て代行し、行政が求める完璧な形式で提出します。
- 関係機関との折衝: 農業委員会、市町村、土地改良区、隣接地の所有者など、多岐にわたる関係者との面倒な調整や交渉を代行し、あなたの負担を軽減します。
- 現地調査対策: 現地で問題となると予測される点を事前に洗い出し、許可を見据えた計画を策定します。
農地転用許可は、あなたの夢の実現に向けた、非常に重要な最初のステップです。そのハードルを乗り越え、確実に許可を得るためには、専門家のサポートが最も確実で迅速な方法です。
まずは、あなたの土地の状況と実現したい計画について、専門家である行政書士にご相談ください。複雑で難しい手続きは弊所に任せて、本業に集中してください。


