熱絶縁工事業とは?どんな工事の内容が当てはまる?建設業許可取得に役立つ資格も併せて解説!
熱絶縁工事業とは?どんな工事内容が当てはまる?建設業許可取得に役立つ資格も併せて解説!

建設業許可は全部で29種類あり、自社がどのような工事を専門に行うかによって、最適な業種を選定する必要があります。この記事では、特に「熱絶縁工事業」に焦点を当て、その具体的な内容、他の業種との違い、そして許可取得に不可欠な資格まで詳しく解説します。これから建設業許可を取得しようと考えている方は、ぜひ最後までお読みいただき、自社の事業に合っているか、そしてどのように許可を取得すれば良いかを確認してください。
目次
熱絶縁工事業とは?その重要性と仕事の範囲
熱絶縁工事業は、建築物や設備、配管、機器などを、熱、冷気、音といった外部からの影響から守るために、断熱材、保温材、保冷材、吸音材などを施工する専門工事です。単に材料を取り付けるだけでなく、その材料の特性や施工場所の環境を考慮し、最適な方法で工事を行う高度な技術が求められます。
この工事の役割は、現代社会においてますます重要になっています。例えば、工場やプラントでは、熱効率を高めることでエネルギーコストを削減し、生産性を向上させます。また、オフィスビルや住宅では、冷暖房効率を向上させることで光熱費を抑え、快適な居住環境を保つことができます。さらに、機器の表面温度を一定に保つことで、作業員の安全を守る役割も果たします。このように、熱絶縁工事業は、エネルギー問題、環境問題、そして労働安全の観点からも、私たちの生活に欠かせないインフラの一つと言えるでしょう。
建設業法における熱絶縁工事業の定義と具体的な工事内容
建設業法では、熱絶縁工事業を以下のように定義しています。
「工作物又は工作物の設備を熱絶縁する工事」
この定義は簡潔ですが、その範囲は非常に広範です。具体的には、以下のような多岐にわたる工事が「熱絶縁工事業」に該当します。
- 冷暖房設備、冷凍冷房設備、動力設備、または燃料工業、化学工業等の設備の熱絶縁工事:
- 工場や商業施設、病院などの空調設備における冷温水配管や冷媒配管、ダクトに断熱材や保温材を巻き付ける工事。
- 大規模なボイラーやタンク、化学プラントの反応炉など、高温・低温になる機器に保温材・保冷材を施工する工事。
- 発電所のタービンや配管に、耐熱性の高い断熱材を施工する工事。
- ウレタン吹付け断熱工事:
- 住宅やビルの壁、屋根、床下などに、スプレー式の発泡ウレタンフォームを吹き付け、隙間のない一体型の断熱層を形成する工事。高い気密性と断熱性能を同時に実現できるため、高気密・高断熱住宅で特に多く採用されます。
その他にも、音を遮断・吸収するための吸音材・遮音材の施工も、この業種に含まれる場合があります。これは、劇場やスタジオ、オフィスなど、静音性が求められる場所で重要な工事となります。
他の業種との線引き
熱絶縁工事業は、その工事内容が他の業種と重複する部分が多く、特に「管工事」との区別が非常に重要です。この線引きを間違えて申請してしまうと、せっかく取ったのに再度対象の業種で取り直さないといけなくなったりします。
- 管工事との違い:
- 熱絶縁工事業は、「すでに設置されている配管やダクト」に断熱材を施工することが主たる工事です。
- 一方、「管工事」は、冷暖房設備や給排水設備、ガス配管など、配管そのものを設置する工事を指します。
- つまり、配管の設置まで含めて受注する場合は「管工事」の許可、断熱材の施工のみを請け負う場合は「熱絶縁工事業」の許可が必要となります。
このように、工事の「主たる目的」が何であるかによって、申請すべき業種が変わってきます。もし迷う場合は、複数の業種を同時に申請することも可能です。
建設業許可取得に必要な要件
建設業許可を取得するには、大きく分けて以下の2つの要件を満たすことが必須です。どちらの要件も欠かすことができません。
1. 経営業務の管理責任者(経管)
法人の役員や個人事業主として、建設業に関して5年以上の経営経験があること。これは、事業の健全な経営を担保するための重要な要件です。
2. 専任技術者(現営業所技術者)
各営業所に、許可を受けようとする建設業に関する一定の資格や実務経験を持つ「専任」の技術者を配置する必要があります。この専任技術者は、その営業所に常勤している必要があり、他の事業所の専任技術者と兼務することはできません。これから資格取得を検討する方は、この要件をどう満たすかが鍵となります。
建設業許可(熱絶縁工事業)取得に役立つ資格

専任技術者の要件を満たすために、以下の資格が非常に役立ちます。これらの資格は、申請する許可の種類(特定建設業または一般建設業)によって認められる範囲が異なります。
また、資格の保有は必須というわけではありません。実務経験のみで専任技術者となることも可能です。
(別記事:専任技術者の要件について分かりやすく解説)
特定建設業許可
特定建設業許可は、元請として5,000万円(税込)以上の下請契約を締結する大規模な工事を行う場合に必要となります。
- 一級建築施工管理技士
一般建設業許可
特定建設業許可に該当しないすべての工事を行う場合に必要となります。
- 一級建築施工管理技士
- 二級建築施工管理技(仕上げ)
- 一級熱絶縁施工技能士
- 二級熱絶縁施工技能士
- 登録保温保冷基幹技能者
一級熱絶縁施工技能士を保有していれば、実務経験なしで要件を満たせますが、二級のみ保有の場合は加えて3年の実務経験が必要となります。
(別記事:建設業の技能検定の種類はどのくらいあるの?)
資格がない場合は?
上記の資格がない場合でも、諦める必要はありません。熱絶縁工事に関する10年以上の実務経験があれば、専任技術者の要件を満たすことができます。この場合、その実務経験を証明する書類(注文書、請書、工事台帳など)が必要になりますので、日頃からしっかりと記録を残しておくことが非常に重要です。
建設業許可取得までの流れ
- 要件の確認: まず、自社の経営者、経営業務の管理責任者と専任技術者の要件をそれぞれ満たしているかを確認します。
- 必要書類の準備: 会社の履歴事項全部証明書、実務経験証明書、資格証明書など、多岐にわたる書類を漏れなく準備します。
- 申請書の作成: 都道府県知事または国土交通大臣宛ての申請書類を作成します。書類作成には専門的な知識が求められます。
- 審査・許可: 提出された書類が審査され、要件を満たしていれば許可がおります。審査期間は通常、数週間から数ヶ月かかる場合があります。
この手続きは非常に複雑で、慣れていないと多くの時間と労力がかかります。そのため、行政書士などの専門家に依頼する方が、スムーズかつ確実に進めることができるでしょう。
まとめ

熱絶縁工事業は、建物の省エネ化や快適性を向上させる上で欠かせない、非常に専門性の高い工事です。他の業種との線引きが曖昧な部分もありますが、「断熱・保温・保冷・遮音」を主目的とする工事であるかを基準に判断しましょう。
建設業許可を取得するには、実務経験や関連資格が必須となります。特に、熱絶縁施工技能士の資格は、許可取得の大きな助けとなります。もし資格がなくても、10年間の実務経験で要件を満たすことができるため、諦める必要はありません。
この記事が、これから熱絶縁工事業で建設業許可を取得しようと考えているあなたの悩みを解決する一助となれば幸いです。許可取得のプロセスは複雑ですが、正しい知識を持って計画的に進めれば、必ず取得できます。熱絶縁工事業の建設業許可を取得して、事業のさらなる拡大を目指していきましょう。