指定建設業の許可取得のために知っておくべき重要ポイント
指定建設業の許可取得のために知っておくべき重要ポイント

「指定建設業って聞いたことがあるけど、他と何が違うの?」こんな疑問を持ったことはないでしょうか。
よく混合されがちですが、建設業許可には一般建設業と特定建設業の2種類があります。結論から申し上げますと、指定建設業は全く違う概念です。
今回は、「指定建設業とは何か」から「指定建設業で特定建設業許可を取得するためには、他の業種と違って何が必要なのか」までを詳しく解説します。
指定建設業のことがよく分からず、あいまいになっている。そんな方のお役に立てられれば幸いです。
目次
はじめに:なぜ指定建設業の許可は「難しい」のか?
建設業を営む上で、一定規模以上の工事を直接請け負う場合、「特定建設業許可」の取得が必要となります。その中でも、「指定建設業と呼ばれる7つの業種は、他の業種に比べて許可要件が特に厳しく設定されています。これは、これらの業種が国民生活や経済活動に与える影響が大きく、工事の適正な施工と安全性の確保が特に重要視されているためです。
この記事では、指定建設業の許可取得を目指す事業者の皆さんが直面する、特に厳しいとされる3つの重要ポイントを解説します。
指定建設業とは?その特徴と必要性

まず、指定建設業とは具体的にどの業種を指すのでしょうか。建設業法で定められている指定建設業は、以下の7業種です。
- 土木工事業
- 建築工事業
- 電気工事業
- 管工事業
- 鋼構造物工事業
- 舗装工事業
- 造園工事業
これらの業種は、いずれも大規模なインフラや建築物の建設に深く関わり、高度な専門技術と多額の資金を必要とします。そのため、元請として下請け業者を適切に管理・指導できる能力が求められるのです。
特定建設業の許可を取得すると、5,000万円(建築一式工事の場合は8,000万円)以上の大規模な工事を元請として直接請け負うことが可能になります。事業拡大を目指す上で欠かせない許可と言えます。
※令和7年2月より、改正があり特定建設業許可の金額要件が引き上げられました。(改正前は4500万円)
指定建設業許可取得の2つのハードル
ここからが本題です。指定建設業の許可を取得する際に、特に注意すべき2つのハードルについて詳しく見ていきましょう。
ハードル①:専任技術者の要件(最も高い壁)
特定建設業の許可を取得するためには、営業所ごとに「専任技術者」を配置する必要があります。指定建設業の場合、この専任技術者に求められる要件が他の特定建設業種よりも格段に厳しくなります。
具体的には、以下のいずれかを満たす必要があります。
- 指定建設業種に対応する1級の国家資格(例:一級建築士、1級土木施工管理技士など)を持つ者。
- 指定建設業種に対応する技術士の資格を持つ者。
- 大臣認定を受けた者。
特に重要なのは、「実務経験10年以上」といった学歴・実務経験のみでは、指定建設業の専任技術者になることができないという点です。これは、高度な専門性と技術力が求められる指定建設業において、単なる経験だけでなく、国家資格に裏打ちされた知識・技能が必要とされているためです。
ハードル②:厳しい財産的基礎の要件
特定建設業の許可を取得するには、下請け業者への支払いを確実に履行するための「財産的基礎」が求められます。指定建設業の場合、その基準は以下の通りです。
- 資本金が2,000万円以上あること。
- 自己資本が4,000万円以上あること。
- 流動比率が75%以上であること。
- 欠損の額が資本金の20%以内であること。
特に「自己資本4,000万円」と「流動比率75%以上」は、多くの事業者がクリアに苦労するポイントです。自己資本とは、貸借対照表の「純資産の部」の合計額を指し、流動比率は、流動資産を流動負債で割った比率のことです。これらの要件を満たせるよう、財務状況の健全性を日頃から維持しておくことが非常に重要になります。
許可取得に向けた準備と手続きの流れ

許可取得を目指す場合、まずは自社が上記の要件をクリアしているかを確認することが第一歩です。特に、専任技術者の要件を満たす人材の確保が最も重要となります。
許可申請手続きは、以下のような流れで進めます。
- 必要書類の収集: 会社の登記簿謄本、決算書、技術者の資格証明書、実務経験証明書など、多岐にわたる書類を準備します。
- 申請書の作成: 複雑な申請書類を作成し、許可行政庁(国土交通大臣)に提出します。
- 審査: 提出された書類をもとに、行政庁による厳格な審査が行われます。
- 許可の取得: 審査を通過すれば、許可通知書が交付されます。
これらの手続きは非常に専門的で煩雑なため、建設業許可に精通した行政書士に依頼することを強くお勧めします。専門家に任せることで、書類の不備による申請の遅延を防ぎ、スムーズな許可取得を目指すことができます。
まとめ:指定建設業の許可は、事業拡大へのパスポート

指定建設業とは、簡単に要約すると特定建設業許可の取得で「専任技術者に実務経験のみではなれない」7業種の事です。
指定建設業の許可取得は、多くの事業者にとってハードルが高い挑戦です。しかし、この厳しい要件をクリアすることで、5,000万円以上の大規模工事を受注できる信用力と技術力を対外的にアピールできます。これは、公共工事への参入はもちろん、民間工事においても大きなアドバンテージとなります。
決して容易な道ではありませんが、この記事で解説したポイントを事前に理解し、計画的に準備を進めることで、その道は必ず開けます。指定建設業の特定建設業許可取得して、さらなる事業の拡大を目指しましょう。