飲食店を開業したい!どんな資格や許可が必要?ケース別に解説
飲食店を開業したい!どんな資格や許可が必要?ケース別に解説

「いつか自分のお店を持ちたい」という夢を持ち、飲食店開業を目指す方は多いでしょう。しかし、その夢を実現するためには、避けて通れないのが「資格」と「許可」の手続きです。
食品に関する許可だけでも膨大な種類が存在します。
「何から手をつけて良いかわからない」「複雑そう…」と感じている方もご安心ください。この記事では、飲食店開業に必要な資格と許可を、あなたの開業スタイル(ケース)に合わせて専門家である行政書士が、わかりやすく解説します。
これから飲食店開業を考えている方に、少しでも参考にしていただけると幸いです。
1|飲食店開業に「必須」の資格と許可(全ケース共通)

まずは、どんな飲食店を開業するにしても、必ず必要になる基本的な資格と許可について解説します。
必須の資格:食品衛生責任者
飲食店を開業するにあたり、お店に最低1名は配置が義務付けられているのが「食品衛生責任者」です。
食品衛生責任者というワードで、「何か資格が無いとなれないのかな」と思う方もいらっしゃるかもしれんが、もちろん特定の資格があれば無条件でなることが出来ますが、資格が無くても1日講習を受けることでなることが出来ます。
| 項目 | 詳細 |
| 役割 | 食品の衛生管理、従業員への衛生教育、施設設備の衛生維持など、お店の衛生管理全般の責任者。 |
| 資格取得方法 | 以下のいずれかを満たすこと。 1. 都道府県の食品衛生責任者養成講習会を受講する(1日)。 2. 栄養士、調理師、製菓衛生師などの特定の資格を所持している。 |
| 注意点 | お店の営業許可申請時に、食品衛生責任者の氏名と資格を証明する書類の提出が求められます。 |
【重要】 多くの自治体で、受講が立て込んでいるケースがあります。開業準備の初期段階で、講習会の予約を取っておくことを強くおすすめします。
別記事:食品衛生責任者の資格は講習で取れる!知っておきたい取得方法と費用
必須の許可:飲食店営業許可(保健所)
実際に飲食物を調理・提供する形態の飲食店を開業する場合、必ず管轄の保健所に申請しなくてはならないのが「飲食店営業許可」です。できるだけ早い段階で、一度保健所に事前相談することをおすすめします。
| 項目 | 詳細 |
| 申請先 | 店舗を管轄する保健所の。 |
| 手続きの流れ | 1. 事前相談 2. 申請書類の提出 3. 保健所職員による施設の立ち入り検査 4. 許可証の交付 |
| 立ち入り検査のポイント | 食品衛生法に基づいた「施設基準」を満たしているかが検査されます。特に、厨房のシンクの数、手洗い設備の場所、内装材、換気設備などが厳しくチェックされます。 |
| 注意点 | 申請は施設完成の10日~2週間前までに行う必要があります。基準を満たさない場合、許可が下りず、店舗のオープンが延期になってしまうため、内装工事に入る前に保健所に事前相談を行うことが極めて重要です。 |
必須の届出:開業届(税務署)
事業をスタートさせることを国に知らせるための手続きです。事前にインターネットでダウンロードして作成しておけば、税部署で提出するだけでOKです。もちろん税務署でも届出書を入手できます。
| 項目 | 詳細 |
| 届出名 | 個人事業の開業・廃業等届出書(通称:開業届) |
| 申請先 | 店舗を管轄する税務署。 |
| 提出期限 | 開業日から1ヶ月以内。 |
| メリット | 青色申告の承認申請書を同時に提出することで、最大65万円の青色申告特別控除が受けられるなど、税制面で大きな優遇措置があります。 |
2|【ケース別】追加で必要になる資格・許可・届出

提供するサービスや店舗の規模、深夜の営業形態によって、上記以外にも追加で必要な資格や許可が出てきます。
ただしここでご紹介するのは一例なので、特殊な食品を扱ったりする場合は別途許可が必要となる場合があります。
ケース1:お酒をメインに提供したい場合(居酒屋・バーなど)
許可:深夜酒類提供飲食店営業開始届出書
主食(ラーメン、定食など)ではなく、酒類をメインとして提供し、かつ深夜0時以降もお酒を提供する場合に必要です。
居酒屋やバーなどが主な例です。キャバクラやスナックは接待行為が伴うため、別途風俗営業許可が必要になります。
| 項目 | 詳細 |
| 申請先 | 店舗を管轄する警察署 |
| 申請条件 | 1. 客席の床面積が9.5平方メートル以上であること。 2. 店舗の所在地が住居専用地域などの特定の地域でないこと。 3. 客室の照度が20ルクス以下でないこと(暗すぎないこと)。 |
| 注意点 | この届出を提出する場合、接待行為(ホステスなどによる接客)はできません。接待を行う場合は、風俗営業の許可(後述)が必要となり、手続きが全く異なります。 |
別記事:深夜酒類提供飲食店営業開始届とは?対象・必要書類・申請先を徹底解説!
【補足】酒類販売業免許(お酒の小売・テイクアウト販売を行う場合)
店頭でビールやワインなどをボトルで販売(小売)する場合や、ネットでお酒を販売する場合は「酒類販売業免許」が別途必要になります。もし必要となる場合は、手続きが複雑なため専門家に依頼を検討するか、事前にしっかりと調べておきましょう。
ケース2:収容人数が多い、火を使う設備がある場合
資格:防火管理者
店舗の収容人数が30人以上の場合(従業員含む)は、防火管理者を選任し、消防計画を作成・届出することが義務付けられています。
| 項目 | 詳細 |
| 役割 | 火災予防、消防計画の作成・訓練実施、消防設備(消火器など)の点検・維持管理の責任者。 |
| 資格取得方法 | 自治体や消防署が実施する防火管理講習を受講する。店舗の規模により「甲種」と「乙種」に分かれます。 |
| 注意点 | 収容人数が30人未満でも、火気を使用する設備を設置する場合は、消防法上の届出が必要になるケースがあります。内装工事着工前に、必ず管轄の消防署に相談しましょう。 |
※よく勘違いされるのが、「従業員を含めて30人以上」というポイントです。お客さんが30人ではなく、スタッフも含めて30人という点に注意しましょう。
届出:火を使用する設備等の設置届出書
厨房に大型のコンロやオーブンなどの火を使用する設備を設置する場合、消防署への届出が必要になることがあります。これは防火管理者とは別で必要な手続きです。
ケース3:深夜の接待を伴う営業をする場合
許可:風俗営業許可(1号営業)
ホステスがお客さんの隣に座って談笑したり、歌を歌ったりする、「接待」を伴うバーやスナック、キャバクラを開業する場合は、通常の飲食店営業許可ではなく、風俗営業許可が必要です。
| 項目 | 詳細 |
| 申請先 | 警察署 |
| 規制 | 営業時間に制限(原則深夜0時以降の営業禁止)、店舗の構造(客室内の見通しを妨げる設備禁止)、立地(学校や病院の周辺など、特定の保護対象施設から一定距離を置く必要がある)など、極めて厳格な規制があります。 |
| 注意点 | 申請から許可が下りるまでに50日以上かかることが多く、準備期間を長く見積もる必要があります。 |
3|開業準備をスムーズに進めるためのロードマップ

資格と許可の手続きは、開業準備の重要なマイルストーンとなります。以下の順番で進めると、手戻りが少なくスムーズです。
- コンセプト・事業計画策定:提供するサービス(アルコール主軸か、深夜営業するかなど)を明確にする。
- 資金調達・物件契約:契約前に必ず保健所・消防署への事前相談を済ませる。
- (必須)食品衛生責任者資格の取得:講習会の予約・受講を済ませる。
- 内装工事の開始:保健所の指示に従った設備を整備する。
- 工事完了10日~2週間前:保健所に飲食店営業許可の申請を行う。
- 工事完了直前:消防署に防火管理者選任届や火を使用する設備等の設置届を提出する。(必要な場合)
- 開業直前:保健所の立ち入り検査を受け、営業許可証を取得する。
- 開業直後:税務署に開業届、警察署に深夜酒類提供飲食店営業開始届出書を提出する。(必要な場合)
4|まとめ:計画的な準備が成功への鍵

飲食店開業に必要な資格と許可は多岐にわたりますが、最も重要なのは、「設計・内装工事に入る前に、管轄の保健所と消防署に相談する」という一点です。
特に「飲食店営業許可」は、一度工事が終わってしまうと基準を満たすための改修に多大な費用と時間がかかってしまうリスクがあります。
綿密な計画と、関係各所とのスムーズな連携こそが、夢の実現、そしてお店の成功へと繋がる最短ルートです。
不安な部分は専門家である行政書士に相談するのが確実です。弊所でも、飲食店に関する許可や届出は取り扱っておりますので、是非お気軽にご相談ください。


