【2026年法改正】自動車登録・車庫証明の代行が「違反」になる!? 行政書士法の改正で自動車販売店が知るべき対処法
【2026年法改正】自動車登録・車庫証明の代行が「違反」になる!? 行政書士法の改正で自動車販売店が知るべき対処法

自動車販売店の皆様、日常業務で欠かせない自動車登録や車庫証明の手続き。多くの場合、お客様へのサービスの一環として、これらの手続きを「代行」されていると思います。
しかし、この慣行が、2026年(1月1日~)の行政書士法改正により、大きな転換期を迎える可能性があります。
これまでは「グレーゾーン」とも言われていた報酬を得ての登録代行業務が、改正によって明確に「行政書士の独占業務の侵害」と見なされ、罰則の対象となるかもしれません。
※独占業務とは、その者しか行ってはいけないとされている業務のことです。今回の場合「行政書士しか行ってはいけないとされている業務」のことです。
この記事では、自動車販売店様が知っておくべき行政書士法改正のポイントと、その対策について、分かりやすく具体的に解説します。この変化を正しく理解し、2026年に向けて法適合な業務体制を整えることが、持続可能な経営の鍵となります。ご参考にしていただけると幸いです。
目次
090-9451-9906(担当:茂木)
1|行政書士法改正(2026年1月1日)の背景とは?そして販売店に迫る「代行業務の危険性」

1. 今まで「グレーゾーン」だった報酬を得ての代行業務の実態
現在、多くの自動車販売店では、車両の販売時に、手数料やサービス料などの報酬(対価)を受け取り、お客様に代わって運輸支局(旧・陸運局)での自動車登録手続きや、警察署での車庫証明手続きを行っています。
- 自動車登録: 新車の新規登録、中古車の移転登録など、車を購入する際に必要となる手続き。
- 車庫証明: 自動車の保管場所を確保していることを証明する手続き。
これらは本来、行政書士の独占業務とされています。しかし、自動車販売店が「販売契約に付随するサービス」として行う場合や、「実費の精算のみ」であれば問題ないとされてきました。特に、「代行手数料」といった名目で報酬を受け取る行為は、法律上は非行政書士行為(行政書士ではない者が行政書士業務を行うこと)に該当する可能性がありましたが、業界の慣行として黙認されてきたという側面がありました。これが、いわゆる「グレーゾーン」です。
2. 改正の焦点:報酬を得ての代行が「明確な罰則対象」へ
2026年の行政書士法改正は、この「グレーゾーン」に明確なメスを入れ、「行政書士ではない者」が「報酬を得て」他人の行政手続き書類の作成や提出代行を行うことへの規制を明確化・強化することを目的としています。
法改正の背景には、デジタル化の進展や、国民の行政手続きに対する信頼性を高めるという目的があります。行政手続きの書類作成や代行は、国民の権利義務に関わる重要な業務であり、専門的な知識と責任感を持つ行政書士が担うべきであるという考えが徹底されます。
具体的には、自動車販売店が「登録代行手数料」「車庫証明手数料」といった名目で報酬(対価)を受け取り、自動車登録や車庫証明の書類を作成し、提出代行を行う行為が、「非行政書士行為」として厳しく取り締まられる可能性が高くなります。
逆に言うと、全くの無償で代行する分には全く問題はありません。(例:親族の車庫証明手続きを無料で代わりにやってあげる等)
この「行政書士の独占業務の侵害」に対する罰則は、現行法でも「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」と定められています(行政書士法第21条)。改正により、この罰則規定の適用が、より明確化・厳格化され、罰則のリスクが現実のものとなります。
2|行政書士法とは? 行政書士の「独占業務」を徹底解説

1. 行政書士法が定める「行政書士の独占業務」
行政書士法とは、行政書士の制度を定め、その業務の適正を図ることを目的とした法律です。
簡単に言えば「行政書士のルールを書いた法律」です。そして、この法律の根幹にあるのが、行政書士の「独占業務」の規定です。
行政書士法第1条の2では、行政書士の業務として、以下の行為が定められています。
- 官公署に提出する書類(自動車登録申請書、車庫証明申請書、各種許認可申請書など)の作成をすること。
- その他権利義務または事実証明に関する書類(契約書、議事録、会計帳簿など)を作成すること。
- 上記書類の作成に関する相談に応ずること。
- 上記書類の提出手続について代理すること。
これらの業務を「他人の依頼を受け、報酬を得て」行うことは、行政書士にしか許されていません。行政書士以外の者がこれらの業務を「業として」行うことは、行政書士法違反となります。
※「行政書士法に違反する状態」ということで「行政書士法違反」です。
2. 「報酬」と「業として」の厳格な解釈
法改正後の焦点は、代行業務が「報酬を得た」「業として」の行為と見なされるかどうかにあります。
① 「報酬(対価)」とは?
行政書士法における報酬は、必ずしも「手数料」という名目で受け取る現金に限定されません。
- 直接的な手数料: 登録代行料、車庫証明料など、代行サービスに対する明確な対価。
- 間接的な利益: 車両本体価格に代行費用を上乗せすることで得た利益や、代行サービスを付帯することで販売契約を成立させ、得た経済的利益。
車両販売の付随サービスとして代行を行ったとしても、その行為が経済的な利益に結びついていると判断された場合、「報酬を得た」と解釈されるリスクが高まります。
② 「業として」とは?
業としてとは、反復継続して行うことを意味します。自動車販売店様の場合、車両販売毎に登録・車庫証明の代行を繰り返すため、これは「業として」行っていると見なされやすいでしょう。
つまり、改正法のもとでは、「販売店が継続的に行い、何らかの経済的利益に繋がる書類作成・提出代行」は、非行政書士行為として罰則の対象となる可能性が出てくるのです。
3|自動車販売店がとるべき具体的対策とロードマップ

2026年の法改正施行までに、自動車販売店様は「合法的な業務体制」への移行を完了させる必要があります。
1. 行政書士との「業務提携」を構築する
法的なリスクを完全に回避し、お客様へのサービス品質を維持する最も確実な方法は、行政書士との正式な業務提携です。
| 現在のリスクのある業務フロー | 改正後の安全な業務フロー |
| × 販売店が代行報酬を受け取り、書類作成から提出まで全て行う。 | 〇 販売店は書類作成・提出代行を一切行わず、行政書士に業務を依頼する。 |
| × 販売店スタッフが行政書士業務を行う。 | 〇 専門家である行政書士が責任を持って業務を遂行する。 |
業務提携のメリット:
- 法的なリスクの解消: 非行政書士行為による罰則リスクをゼロにできます。
- 手続きの確実性向上: 書類作成のプロである行政書士が対応するため、書類不備による手戻りや遅延が減少します。
- アウトソーシングによる効率化: 営業や事務スタッフが行政手続きに費やしていた時間を、販売業務や顧客対応に充てられるようになります。
弊所でも、自動車登録業務をメインで取り扱っております。提携に関しましても、是非お気軽にご相談ください。
090-9451-9906(担当:茂木)
2. 報酬体系の厳格な見直し(無料サービスへ)※注意
もちろん、必ずしも行政書士との提携が必要となるわけではありません。ただ、「報酬」の受領は絶対に避ける必要があります。
- 「代行手数料」の完全撤廃: 見積書、請求書、契約書から「代行手数料」といった報酬性の名目をすべて削除します。
- 実費の透明化: お客様から預かるのは、印紙代、証紙代、公的証書発行手数料など、公的機関に支払う実費のみに限定し、領収書や請求書で内訳を明確にします。
- 無償のサービス化: 書類作成・提出サポートは、全くの無償であるということをお客様にしっかりと説明します。
ただし、解釈によっては自動車販売という行為自体に自動車登録の書類作成・代行が含まれるため、車両購入費用に書類作成や代行費が含まれているとされる場合もあります。そうなってしまうと、たとえ全くの無償で行ったとしても罰則の対象となる可能性が高くなりますので、ご注意ください。
3. 従業員へのコンプライアンス教育と意識改革
法改正は、単なる手続きの変更ではなく、コンプライアンス意識そのものの改革を求めます。
- 研修の実施: 全従業員に対し、行政書士法の独占業務の原則と、違反した場合の会社および個人の法的責任(罰則)について定期的に教育します。
- 新しいフローの習得: 行政書士への依頼を導入するのであれば、その方法やお客様への説明方法など、新しい業務フローを習得させます。
4|行政書士に依頼するメリット:なぜプロに任せるべきか?

法改正への対応として行政書士との連携を強化することは、コスト増ではなく、「経営効率の向上」と「本業への集中」という販売店様にとっての大きなメリットを生み出します。
1. 営業部門の「本業集中」と生産性の向上
自動車登録・車庫証明の書類作成や、運輸支局・警察署での手続きは、多くの時間を要し、特に営業スタッフの貴重な商談時間を奪っていました。
- 煩雑な手続きからの解放: 専門知識が必要で、かつ平日の昼間にしか対応できない非効率な業務をプロに委託できます。
- コア業務への集中: 営業スタッフは、手続きのための移動時間や待ち時間から解放され、車両販売、顧客フォロー、見込み客の発掘といった売上に直結するコア業務に専念できるようになります。
- 人件費の最適化: 代行業務にかかっていた残業代や雑務のための人件費を削減し、業務全体の効率化を図ることができます。
2. 法的・経営的リスクの完全回避
行政書士との連携体制を確立することは、法改正で厳格化される罰則リスクを完全に回避する唯一の確実な方法です。
- コンプライアンス体制の確立: 非行政書士行為による「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」という罰則のリスクを回避し、クリーンな企業イメージを確立できます。
- 手続きミスの削減: 行政書士は法的なプロフェッショナルであるため、書類の不備による登録遅延や手戻り、お客様とのトラブルを大幅に減らし、結果的に業務の円滑化に繋がります。
3. 顧客満足度(CS)の向上とブランド価値の強化
手続きの確実性や迅速性は、最終的に顧客満足度に直結し、販売店様のブランド価値を高めます。
- 迅速で確実な納車: 行政書士による迅速かつ正確な手続きは、書類不備による納車遅延を防ぎ、お客様へ予定通りの車両引渡しを可能にします。
- 専門性のアピール: 「当社の行政手続きは、法的なプロである行政書士と連携して安全に行っています」とアピールすることは、お客様に「信頼できる販売店」という安心感を与えることができます。
5|まとめ:2026年行政書士法改正への対応

2026年の行政書士法改正は、自動車販売業界の長年の慣行に、変化を与えるでしょう。
これまでの「グレーゾーン」は消滅し、報酬を得ての代行業務は、明確に罰則の対象となるリスクが高まります。この変化を「コスト」や「規制」として捉えるのではなく、「コンプライアンス経営を確立し、業務を効率化する絶好の機会」と捉えることが重要です。
自動車販売店様にとって最も安全かつ効率的な道は、行政書士との業務提携を通じて、煩雑な書類作成・提出代行業務をアウトソースし、車両販売という本業に集中することです。
この記事を参考に、速やかに自社の業務フローと報酬体系を見直し、法適合かつ効率的な経営体制へと移行する準備を整えましょう。
090-9451-9906(担当:茂木)
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弊所は各種許認可、自動車登録に特化した行政書士事務所です。
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