【知らなかったでは済まされない】建設業許可の欠格要件とは?代表者・役員が注意すべきポイント
【知らなかったでは済まされない】建設業許可の欠格要件とは?代表者・役員が注意すべきポイント

建設業を営む上で、一定の規模以上の工事を請け負うためには、法律に基づいた「建設業許可」が必要です。しかし、この許可は誰でも取得できるわけではありません。法律で定められたいくつかの要件を満たしている必要があります。
その中でも、重要だけどあまり重要視されていないのが、「欠格要件」です。いくら経営経験や技術力があってもこの欠格要件に一つでも該当してしまうと、許可を取得することはできません。
「知らなかった」では済まされない、この重要なルールについて、これから建設業許可の取得を考えている経営者や代表者、役員の皆様が特に注意すべきポイントを、専門家である行政書士が、分かりやすく徹底解説します。
1|建設業許可における「欠格要件」とは?
欠格要件とは、簡単に言えば「許可を与えてはならないと法律で定められた要件」のことです。建設業法第8条で具体的に定められており、その目的は、業界の健全な発展と、取引の公正性を確保することにあります。
つまり、社会的に信用を欠くような人物や法人、あるいは不適切な事業運営を行っている事業者には、許可を与えないことで、業界全体の信頼性を守ろうという考え方に基づいています。
この欠格要件は、建設業許可の新規申請時だけでなく、5年ごとの更新申請時にも厳格にチェックされます。一度許可を取得したからといって安心はできません。
2|欠格要件に該当する「人」
欠格要件は、特定の「人」に適用されます。具体的には、以下の人が対象となります。
- 申請者(個人事業主)
- 法人の代表者・役員
- 支店長、営業所長(令3条使用人)
これらの人物が、後述する欠格要件のいずれかに該当する場合、許可申請は不許可となります。つまり、会社全体で「欠格要件に該当する人物がいないか」を厳しくチェックする必要があるのです。特に、役員や支店長は、その権限が大きいため、重点的に確認されます。
3|欠格要件の具体的な内容と注意すべきポイント

それでは、具体的にどのような行為や状況が欠格要件に該当するのでしょうか。代表的な項目を分かりやすく解説します。
(1)許可取消しから5年を経過しない者
これは、過去に建設業許可を取得していたが、何らかの理由でその許可を取り消された場合、その取消しの日から5年間は再申請ができないというものです。
- 注意すべきポイント: 過去に別会社で許可を取り消された経歴がある役員を、新会社で迎える場合などは特に注意が必要です。許可取消しは、経営事項審査(経審)の評点ダウンにもつながるため、深刻な事態です。
(2)不正行為による許可取消しから5年を経過しない者
許可の取消しの中でも、特に悪質なのが「不正行為」によるものです。例えば、虚偽の申請書類を提出したことが発覚した場合などがこれに該当します。この場合も、取消しから5年間は再申請ができません。
- 注意すべきポイント: 建設業許可申請は専門性が高いため、行政書士などの専門家への依頼が一般的ですが、その際も「虚偽の書類作成」を依頼するような行為は絶対に避けるべきです。不正行為は、将来にわたって事業の足かせとなります。
(3)刑罰を受けた者
建設業法違反はもちろん、特定の犯罪で刑罰を受けた場合も欠格要件に該当します。具体的には、以下の刑に処せられた場合です。
- 禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行が終わり、または執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
- 建設業法、建築基準法、労働基準法などの特定の法律に違反し、罰金の刑に処せられ、その執行が終わった日から5年を経過しない者
- 注意すべきポイント: 刑務所から出所した日だけでなく、執行猶予期間中も欠格要件に該当します。また、業務上の過失によるものも含め、様々な法律が対象となります。たとえ軽微な違反でも、罰金刑を受けていれば該当する可能性があるため、特に注意が必要です。
(4)破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
自己破産の手続きを開始し、免責許可が下りていない(復権を得ていない)間は、欠格要件に該当します。
- 注意すべきポイント: 自己破産は、個人の生活再建を目的とした法的な手続きですが、その期間中は事業の運営者としての適格性が一時的に認められないと判断されます。免責許可が下りれば復権し、欠格要件には該当しなくなります。
(5)暴力団員等
暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律に規定する暴力団員、または暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者。
- 注意すべきポイント: 暴力団との関わりは、社会的に大きな信用問題となります。役員や従業員に、過去に暴力団員であった人物がいないかを厳しく確認する必要があります。
(6)精神の機能の障害により建設業を適正に営むに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者
精神上の障害によって自分で物事を判断したり、意思表示をしたりするのが難しいと家庭裁判所に認められた人を指します。
- 注意すべきポイント: これは、事業運営において適切な判断を下すことが難しいと判断されるためです。以前は成年後見人・被保佐人は欠格要件に該当するとされていましたが、令和1年に改正がありました。
(7)営業の停止を命じられ、その期間が経過しない者
過去に建設業法に基づく営業停止処分を受けた場合、その期間中は許可申請ができません。
- 注意すべきポイント: 営業停止処分は、軽微な違反から重大な違反まで様々ですが、いずれにせよその期間中は事業活動に大きな制約がかかります。
4|欠格要件に該当しないための事前チェック

これから建設業許可を取得する代表者や役員は、以下のチェックリストを参考に、事前に確認しておくことを強く推奨します。
- 代表者、役員、支店長など、すべての対象者の経歴を再確認する。
- 過去に自己破産の経験はないか?
- 過去に刑罰を受けたことはないか?
- 過去に建設業許可を取り消された経験はないか?
- 暴力団との関係はないか?
- 申請書類は必ず正確に作成する。
- 虚偽の記載は絶対に避ける。
- 専門家(行政書士など)に依頼する場合でも、書類の内容を自分でしっかり確認する。
- 会社としての体制を整備する。
- 過去に不正な事業活動がないか確認する。
- コンプライアンス(法令遵守)体制を構築し、役員・従業員に周知徹底する。
5|まとめ

建設業許可は、事業の信頼性と安定性を高める上で不可欠なものです。しかし、その取得には、単なる書類の準備だけでなく、会社の経営陣や事業運営そのものが、法律で定められた基準を満たしている必要があります。
特に、欠格要件は「知らなかった」では済まされない、非常に重要なルールです。これから建設業許可の取得を検討されている代表者や役員の皆様は、この記事を参考に、自社の体制を今一度、厳しくチェックしてみてください。
もし、不安な点や不明な点があれば、専門家である行政書士に相談することをお勧めします。専門家のサポートを受けることで、スムーズかつ確実に許可取得を目指すことができるでしょう。
欠格要件についてしっかりと理解をし、スムーズに建設業許可を取得しましょう。


