行政書士ってどんな仕事をしているの?他にどんな士業がある?

「行政書士」という名前は聞いたことがあっても、具体的にどんな仕事をしているのか、他の「士業」とどう違うのか、よくわからないという方も多いのではないでしょうか。

今回は、行政書士の仕事内容を詳しく解説するとともに、行政書士と同じく専門性の高い国家資格を持つ「士業」について、その種類と役割をご紹介します。行政書士への依頼を検討している方はもちろん、「この場合は誰に依頼するの?」という疑問をお持ちの方のお役に立てれば幸いです。

1:行政書士の仕事とは?「街の法律家」と呼ばれることも

行政書士は、「行政書士法」に基づく国家資格であり、その業務は官公署に提出する書類権利義務・事実証明に関する書類の作成、そしてそれらの提出代理、相談業務にわたります。その専門性と幅広い業務内容から、「街の法律家」とも呼ばれます。

具体的な仕事内容は非常に多く、依頼者のニーズに合わせて柔軟に対応します。主な業務をいくつかご紹介します。

許認可申請のサポート

行政書士の業務の中で最も多くを占めるのが、この「許認可申請」に関する業務です。事業を始める際や、特定の事業を行うためには、国や地方公共団体の許認可が必要となるケースが多いです。行政書士は、これらの複雑な申請手続きを代行し、事業主がスムーズに事業を開始・継続できるようサポートします。

  • 建設業許可申請: 一定の金額以上の建設工事を請け負うために必要な許可です。取得にあたっては、様々な要件が必要で、複雑な書類作成が求められます。
  • 宅地建物取引業免許申請: 不動産売買や賃貸の仲介を行うために必要な免許です。
  • 飲食店営業許可申請: レストランやカフェなどを開業する際に必要な許可です。
  • 産業廃棄物収集運搬業許可申請: 産業廃棄物の収集や運搬を行うための許可です。
  • 古物商許可申請: 中古品を買い取って販売する事業を行う際に必要な許可です。
  • 風俗営業許可申請: バーやパチンコ店などの風俗営業を行うための許可です。
  • 運送業許可申請: 貨物自動車運送事業や旅客自動車運送事業を開始するための許可です。

これらの許認可申請は、それぞれ必要な書類や添付資料、申請窓口が異なり、専門的な知識がなければ膨大な時間と労力を要します。行政書士は、専門知識に基づき、正確かつ迅速に手続きを進めることで、依頼者の負担を軽減し、事業のスムーズな立ち上げを支援します。

契約書・遺言書等の作成

権利義務や事実証明に関する書類の作成も、行政書士の重要な業務です。

  • 契約書作成: 売買契約書、業務委託契約書、金銭消費貸借契約書など、あらゆる種類の契約書を作成します。トラブルを未然に防ぐため、法的視点から当事者間の合意内容を明確にし、紛争防止に貢献します。
  • 遺言書作成: 遺言者の意思を正確に反映し、遺言書の作成をサポートします。自筆証書遺言の作成支援から、公正証書遺言の作成に向けた公証役場との調整まで幅広く対応します。
  • 内容証明郵便作成: 特定の意思表示や事実の通知を証拠として残すための内容証明郵便の作成を代行します。例えば、未払金請求や契約解除通知などに用いられます。
  • 議事録作成: 株主総会議事録や取締役会議事録など、企業の重要な意思決定を記録する議事録の作成をサポートします。

これらの書類は、将来的なトラブルを避けるためにも、法的な正確性が非常に重要です。行政書士は、依頼者の意図を正確に汲み取り、法的リスクを考慮した上で最適な書類を作成します。

外国人関連業務

国際化が進む現代において、外国人に関する業務も行政書士の重要な柱となっています。

  • 在留資格認定証明書交付申請: 外国人が日本に入国して滞在するために必要な在留資格(ビザ)の申請をサポートします。
  • 在留期間更新許可申請: 日本に滞在している外国人が、現在の在留期間を超えて引き続き滞在するための更新申請を代行します。
  • 永住許可申請: 日本に永住を希望する外国人の永住許可申請をサポートします。
  • 帰化申請: 日本国籍の取得を希望する外国人の帰化申請を支援します。

これらの手続きは、入管法や関連法令に精通している必要があります。行政書士は、専門知識と語学力を活かし、外国人の方のスムーズな日本での生活をサポートします。

法人設立支援

会社設立に関する手続きも、行政書士の重要な業務の一つです。

  • 会社設立: 株式会社や合同会社などの法人設立に必要な定款作成、各種議事録作成、設立登記書類の作成などをサポートします。司法書士と連携して登記申請まで一貫して支援することもあります。
    ※設立の登記は司法書士の独占業務とされているため、行政書士はできません。

事業を始めるにあたり、どのような法人形態を選択すべきか、どのような手続きが必要かなど、専門的なアドバイスを提供し、依頼者の円滑な事業のスタートを支援します。

相続関連

高齢化社会の進展に伴い、相続や遺言に関する相談も増加しています。

  • 相続人調査・相続財産調査: 誰が相続人になるのか、どのような財産があるのかを調査します。
  • 遺産分割協議書作成: 相続人間で合意された遺産分割の内容を明確にするための協議書を作成します。

遺産相続は、親族間でのトラブルに発展しやすいデリケートな問題です。行政書士は、中立的な立場から、法的な観点に基づいた適切なサポートをします。

補助金サポート

  • 各種助成金・補助金申請支援: 国や地方公共団体が実施する助成金や補助金の申請書類作成をサポートします。

上記以外にも、行政書士の業務というのは非常に多く存在します。
このように、行政書士は、個人から法人まで、多様なニーズに応え、日々の生活や事業活動において発生する様々な法的な問題の解決をサポートする「街の法律家」なのです。

2:他にどんな「士業」がある?他士業とその役割

「士業」とは、特定の専門分野において国家資格を有し、その専門性を活かして業務を行う専門家のことです。行政書士もその一つですが、他にも様々な士業が存在し、それぞれ異なる役割を担っています。ここでは、代表的な士業とその役割をご紹介します。

弁護士

  • 独占業務: 法律事務全般(訴訟、交渉、法律相談など)
  • 役割: 依頼者の代理人として、法律紛争の解決、権利擁護、法的アドバイスを行います。民事訴訟、刑事事件など、あらゆる法律問題に対応します。

弁護士は、法律に関するあらゆる業務を独占的に行うことができ、行政書士とは異なり、訴訟代理権を有しています。

司法書士

  • 独占業務: 不動産登記、商業登記、供託、簡易裁判所における訴訟代理(一部)
  • 役割: 権利関係を公示する「登記」の専門家です。不動産の売買や相続、会社の設立・役員変更など、重要な財産や組織に関する法的手続きをサポートします。

行政書士が官公署への提出書類作成を主とするのに対し、司法書士は「登記」に関する業務を専門としています。会社設立においては、行政書士が定款作成などを、司法書士が登記申請を行うなど、連携して業務を行うことも多いです。

税理士

  • 独占業務: 税務代理、税務書類の作成、税務相談
  • 役割: 税金に関する専門家です。個人の確定申告や法人の決算申告書の作成、税務調査への対応、節税対策のアドバイスなど、税金に関するあらゆるサポートを行います。

行政書士は税金に関する書類作成は行うことができません。税金に関する相談や手続きは税理士の独占業務です。

公認会計士

  • 独占業務: 監査業務(企業の財務諸表が適正に作成されているかのチェック)
  • 役割: 企業の会計や財務に関する専門家です。上場企業などの監査を行い、投資家や債権者に対して企業の財務状況の信頼性を保証します。また、コンサルティング業務を行う公認会計士もいます。

公認会計士は、主に大企業の監査を主業務とするのに対し、税理士は中小企業の税務会計を主業務とすることが多いです。

社会保険労務士(社労士)

  • 独占業務: 労働社会保険の手続き、労務管理に関する相談、就業規則作成など
  • 役割: 労働・社会保険に関する専門家です。企業の人事・労務管理全般をサポートし、社会保険の手続き、年金相談、就業規則の作成、ハラスメント対策など、労働者の働きやすい環境づくりに貢献します。

行政書士は労務管理に関する一般的な相談には応じられますが、社会保険の手続きや就業規則の作成など、社会保険労務士の独占業務となるものは取扱うことができません。

弁理士

  • 独占業務: 特許、実用新案、意匠、商標に関する出願代理、審判請求など
  • 役割: 知的財産権に関する専門家です。発明やブランドなどを保護するための特許出願や商標登録などをサポートし、企業の知的財産戦略を支援します。

行政書士も著作権に関する書類作成を行うことはありますが、特許や商標など産業財産権に関する業務は弁理士の独占業務です。

土地家屋調査士

  • 独占業務: 土地の測量、境界確定、建物表示登記、合筆登記、分筆登記など
  • 役割: 不動産の「表示」に関する登記の専門家です。土地や建物の所在、地番、地積、種類、構造などを明確にするための調査・測量を行い、登記を行います。

司法書士が「権利」に関する登記を行うのに対し、土地家屋調査士は「表示」に関する登記を行います。

不動産鑑定士

  • 独占業務: 不動産の鑑定評価
  • 役割: 不動産の経済価値を判断し、適正な価格を評価する専門家です。売買、担保評価、相続など、様々な場面で不動産の評価を行います。

3:まとめ:行政書士は「街の身近な法律家」

行政書士は、私たちの日常生活や事業活動に密接に関わる様々な行政手続きや書類作成の専門家です。その業務は多岐にわたり、依頼者の多様なニーズに応える「街の身近な法律家」として、重要な役割を担っています。

また、社会には行政書士以外にも様々な「士業」が存在し、それぞれが特定の専門分野に特化しています。これらの士業は、単独で業務を行うだけでなく、互いに連携することで、より複雑な問題にも対応し、依頼者にとって最適なサービスを提供しています。

何かお困りごとがあった際には、どの士業に相談すべきか迷うこともあるかもしれません。しかし、行政書士は幅広い業務に対応できるため、まずは行政書士に相談してみるというのも一つの手です。専門外のことであっても、適切な士業を紹介してくれるなど、問題解決のきっかけとなるでしょう。

弊所でも、随時ご相談を受け付けておりますのでお気軽にご連絡ください。

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