「農地転用」ってなに?基本から手続きまで、初めてでもわかる解説ガイド
「農地転用」ってなに?基本から手続きまで、初めてでもわかる解説ガイド

「農地転用」という言葉を耳にしたことはありますか? ご実家が農家だったり、田畑をお持ちの方でなければ、あまり馴染みがないかもしれません。お恥ずかしながら、私も行政書士となるまでは全く聞いたことがありませんでした。
「農地」とは、読んで字のごとく「農業に使う土地」のこと。 日本は古くから農業が盛んな国であり、食料自給率を維持するためにも、この「農地」はとても大切な資源として法律で守られています。
しかし、「田んぼだった場所に家が建っている」「畑だった場所にコンビニができた」という光景を、皆さんも見たことがあるのではないでしょうか?
これがまさに、「農地転用」が行われた土地です。
「農地転用」とは、農地を農地以外の目的で利用すること、あるいはそのために行う法的な手続きを指します。「農業に使う土地」を、農業以外の目的で使うことを国や都道府県が許可する制度、それが「農地転用」なのです。「農地転用」について、農地をお持ちでない方でも理解できるように、基本から分かりやすく解説していきます。
目次
農地転用って、そもそもなぜ必要なの?
「自分の土地なんだから、好きに使っていいんじゃないの?」
そう思われる方もいるかもしれません。
しかし、もし日本中の農地が自由に転用されてしまったら、どうなるでしょうか?
住居や商業施設、駐車場、工場など、便利な建物は増えるかもしれません。 しかし、食料を生産するための土地が減り、日本の食料自給率は大幅に低下してしまうでしょう。 それは、日本の食料安全保障を脅かす重大な問題です。
そこで、食料生産に必要な農地を守るために「農地法」という法律が定められています。 この農地法によって、勝手に農地を農地以外にすることができなくなっているのです。
つまり、農地転用が必要なのは、日本の食料を守るために法律で定められているから、ということになります。
農地転用の2つのパターン

農地転用には、大きく分けて2つのパターンがあります。
- 自分で農地を転用する場合(所有者自ら行う転用)これは、自分の持っている農地を、自分で家を建てたり駐車場にしたりする場合です。 例えば、「実家の畑だった場所に、自分の家を建てたい」というケースがこれにあたります。4条許可なんて言われたりもします。
- 農地を売ったり貸したりして、転用する場合(権利移動を伴う転用)これは、自分の持っている農地を、不動産会社や建設会社など第三者に売却したり、貸したりして、その土地を家や駐車場などにしてもらう場合です。 「使っていない田んぼを売って、アパートを建ててもらいたい」というケースがこれにあたります。5条許可なんて言われたりもします。
どちらのパターンも、「農地を農地以外にする」という点では同じです。
「農地」にも種類がある?農地転用の難易度
すべての農地が同じように転用できるわけではありません。 農地法では、農地の状況に応じて、5つの区分に分類されています。 この区分によって、農地転用の難易度が大きく変わります。
- 農振農用地区域内農地:、「農業を将来にわたって守っていく」と市町村が計画を立てた地域にある、特に重要な農地。
- 甲種農地:良好な営農条件を備えた集団的な優良農地で、特に高い生産性を持つ農地。
- 第一種農地:集団的な農地で、良好な営農条件を備えている農地。
- 第二種農地:市街地の近郊で、将来市街地として発展する可能性のある農地。
- 第三種農地:都市計画区域内の市街化区域にある農地。
一般的に、農振農用地区域内農地、甲種農地、第一種農地は転用が非常に難しいとされています。 これは、日本の食料生産において特に重要な農地だからです。 一方、市街地の中にある第三種農地は、比較的転用が認められやすい傾向にあります。第二種農地も、転用が認められる場合が多いです。(申請された農地の代わりに、周辺の他の土地を供することで、当該の申請の代替地があると認められる場合はNG)
これは、「農地を守る」という目的と、「土地の有効活用」という目的のバランスを考えているためです。
農地転用って、具体的にどんな手続きをするの?

農地転用の手続きは、とても複雑に感じられるかもしれません。
しかし、大きく分けると、行うことは2つです。
- 農地転用の許可(または届出)
- 登記手続き
農地転用の許可は、農地法に基づき、都道府県知事に申請します。 市街化区域内の農地については、農業委員会に届出を行うことで手続きが済みます。
この許可や届出が下りることで、初めて「農地を農地以外に利用してもよい」という法的なお墨付きを得ることができます。
許可が下りたら、次に地目変更登記手続きを行います。 これは、法務局で土地の地目を「田」や「畑」から、「宅地」や「雑種地」に変更する手続きです。 これにより、公的な書類上もその土地が農地ではなくなったことが証明されます。
これらの手続きを、土地家屋調査士や行政書士といった専門家が代行することも可能です。
農地転用を考える際の注意点
農地転用を検討する際には、いくつかの注意点があります。
- 許可が下りない可能性がある 前述した農地の区分や、周辺の環境によっては、希望する転用が許可されないことがあります。
- 費用がかかる 農地転用の手続きには、申請費用や専門家への報酬などがかかります。
- 税金が変わる可能性がある 土地の地目が変わることで、固定資産税などの税額が変わることがあります。
まとめ:「農地転用」は土地の未来を決める大切な手続き

この記事では、農地転用とは何か、なぜ必要なのか、そして大まかな手続きの流れについて解説しました。
農地転用は、単に土地を別の用途に使うことではありません。 日本の食料を守るという大切な目的と、ご自身の土地を有効活用するという二つの側面を持つ、非常に重要な手続きです。
もし、ご実家の農地やご自身の土地のことで、何かお困りのことがあれば、まずは地元の農業委員会や専門家に相談してみることをお勧めします。
専門家は、個別の状況に応じた最適なアドバイスを提供してくれます。
是非農地転用に挑戦してみてください。
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