【建設業許可は必要?】美装工事を行う場合に建設業許可は必要か?専門家が解説します!

【建設業許可は必要?】美装工事を行う場合に建設業許可は必要か?専門家が解説します!

美装工事を専門とする事業者様にとって、「建設業許可は必要なのだろうか?」という疑問は、事業の拡大を考える上で避けて通れないテーマです。

特に、美装工事が「竣工清掃工事」と呼ばれることから、建設業許可の業種の一つである「清掃施設工事業」を取得しなければならないと勘違いされるケースも少なくありません。

結論から申し上げると、美装工事単体であれば許可は不要です。しかし、事業の安定と拡大、そして元請けからの信頼獲得を目指すなら、関連する建設業許可を戦略的に取得した方が圧倒的に有利になります。

この記事では、美装工事と建設業許可の関係を明確にし、許可が不要なケース、清掃施設工事業との誤解、そしてリフォームや付帯工事を請け負う際に注意すべき点について、初めて建設業許可に触れる方にも分かりやすく、専門的な視点から徹底解説します。少しでも参考にしていただけると幸いです。

1|美装工事の定義と建設業許可の基本原則

まず、美装工事が建設業許可の対象となるのかどうかを判断するために、その定義と建設業法の基本原則を確認します。

1. 美装工事(竣工清掃工事)の範囲

美装工事とは、主に新築・改築・リフォーム工事の最終工程として行う、建物の最終的な清掃・仕上げ作業を指します。具体的な作業内容は以下の通りです。

  • ホコリ、木屑、養生材の撤去
  • ペンキやパテなどの付着物の除去
  • 床のワックスがけ
  • ガラス、サッシ、建具の拭き上げ
  • 設備機器の拭き取り

これらの作業は、建物の機能や構造を新設・修繕・変更する行為ではなく、あくまで建物を引き渡し可能な状態に整えるサービスとして位置づけられます。

2. 建設業許可が不要なケース(原則)

建設業許可は、建設業法で定められた29種類の「建設工事」を請け負う場合に必要となるものです。

美装工事における「清掃」「ワックスがけ」「雑物の撤去」といった行為は、建設業法で定める29業種のいずれにも該当しないため、「清掃サービス」や「雑役」として扱われます。

したがって、美装工事(ハウスクリーニング)のみを請け負う場合、請負金額がいくらであっても原則として建設業許可は不要です。

2|美装工事と「清掃施設工事業」の決定的な誤解

美装工事は「竣工清掃工事」という別名を持つため、建設業許可にある「清掃施設工事業」を取得する必要がある、と勘違いされるケースが非常に多く見られます。しかし、これは全くの誤解です。

業種名定義と対象工事美装工事との関係
清掃施設工事業ごみ処理施設、し尿処理施設などの建設に関する工事。例えば、焼却炉や下水処理設備の設置工事。美装工事とは全く異なる業種です。 建物の最終清掃作業は、この業種には該当しません。

美装工事は、清掃施設工事業の許可では請け負えません。美装工事業者が取得を検討すべき業種は、清掃施設工事業ではなく、美装工事に付随して請け負う「内装」「建具」「塗装」「防水」などの付帯的な建設工事に関連する業種となります。

関連記事:清掃施設工事業とは?どんな工事の内容が当てはまる?建設業許可取得に役立つ資格も併せて解説!

3|リフォームや付帯工事を請け負う場合の注意点

美装工事をきっかけに、顧客から「ついでに壁紙も張り替えてほしい」「サッシを交換したい」といったリフォーム工事や修繕工事を一括で依頼されることは少なくありません。
また、事業拡大により美装工事だけでなく「リフォームまで一括」で請け負うこととなった場合も考えられます。

このとき、美装工事とリフォーム(建設工事)を合わせて請け負う場合は、以下の注意点を厳守する必要があります。

1. 建設工事の部分が500万円以上なら、必ず許可が必要

建設業許可がない「無許可」の業者が請け負える建設工事は、「軽微な建設工事」に限られます。

  • 軽微な建設工事の範囲: 1件の請負代金の額が500万円未満の工事(税込)

美装工事とリフォーム工事を一括で請け負った場合、その請負代金のうち「リフォーム工事(建設工事)に該当する部分の金額」が500万円(税込)以上になる場合は、該当する建設業許可が必須となります。

2. 建設工事の部分が500万円未満でも、許可取得が有利

たとえ建設工事の部分が500万円未満であっても、元請け業者との取引や、会社の信頼性を高めるために、関連業種の許可を取得することが推奨されます。

4|美装工事業者が付帯工事で取得すべき建設業許可(ケース別)

美装工事業者が請け負う可能性のある付帯工事は多岐にわたります。事業拡大のために、特に請負が増えやすい内装関連の工事を中心に、取得を検討すべき業種をケース別に解説します。

ケース請け負う工事の内容必要な建設業許可の業種注意点
ケースA:内装仕上げ美装後の壁紙(クロス)の張替え、床材(フローリング、カーペット)の張替え、間仕切りの設置等内装仕上工事業美装工事と内装仕上げ工事を一括で請け負う場合、内装仕上げ工事の部分が500万円以上なら許可が必要
ケースB:建具・サッシ交換美装と合わせて、古くなった窓サッシの交換、ドアの交換、網戸の設置、障子や襖の張り替え。建具工事業既製品の建具の取り付け・交換も「建具工事業」に該当します
ケースC:防水・塗装外壁美装(高圧洗浄)と合わせて、外壁のひび割れ補修、シーリングの打ち替え、屋上やベランダの防水塗装。防水工事業塗装工事業建物の保護と維持を目的とする工事は建設工事です。防水・塗装の専門性をアピールできます。

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許可なしで500万円以上の工事を請け負うリスク

もし上記の付帯工事の部分の請負金額が500万円以上であるにもかかわらず、該当する建設業許可がない状態で工事を請け負った場合、それは建設業法違反(無許可営業)となり、3年以下の懲役または300万円以下の罰金という非常に重い罰則の対象となります。

関連記事:実際、建設業許可なしで500万円以上の工事を請けたらどうなるの?厳しい罰則と許可の重要性

5|建設業許可を取得した方が良い3つの理由

美装工事のみであれば許可は不要ですが、上記のリスクを回避し、事業の安定と持続的な成長を実現するためには、関連業種の建設業許可を戦略的に取得することが最も賢明な選択です。

1. 元請けからの信用度競争力が格段に向上する

  • 信頼の証: 建設業許可は、経営体制、技術力、財産的基礎(一定の資金力)が国や都道府県によって認められた「優良企業」の証です。
  • 取引先の選定基準: 大手ハウスメーカーやデベロッパーなどの元請け業者は、コンプライアンス順守のため、許可業者を優先的に選定します。許可を持つことで、安定した取引先との契約や、公共工事の受注チャンスが飛躍的に広がります
  • 価格競争からの脱却: 許可を持つことで、単なる「清掃サービス」の価格競争から脱却し「建設・修繕のプロ」としての高い付加価値と提案力で差別化を図ることができます。

2. 請負可能な工事の規模の制限がなくなり、売上が最大化する

無許可の場合、建設工事は500万円未満に限定されますが、許可を取得すればこの金額の制限がなくなります

リフォームや修繕工事は、一つの案件で請負金額が500万円を超えることが珍しくありません。許可があれば、大規模な内装リニューアルやマンション全体の防水工事など、高額な案件を一括で受注できるようになり、会社の売上ポテンシャルを最大化できます。

3. 企業としての安定性ブランディングに繋がる

建設業許可を維持するためには、毎年の事業報告や財務状況の透明性が求められます。このプロセスを通じて、経理体制や法令順守体制(コンプライアンス)が強化され、結果的に企業としての内部統制と安定性が高まります。

「私たちは建設業許可を持つプロの美装工事業者です」というブランディングは、優秀な人材の採用金融機関からの融資を受ける際にも非常に有利に働きます。

6|まとめ:美装工事業者が事業拡大のために取るべき行動

美装工事単体では建設業許可は不要であるという原則は変わりませんが、成長を目指す美装工事業者様にとって、許可の取得は「選択」ではなく「戦略」と言えます。

求める事業像建設業許可の必要性最優先で検討すべき行動
美装工事専門不要
リフォーム・修繕まで一括請負必須(500万円以上の建設工事を請け負うなら)内装仕上工事業、建具工事業、防水工事業など関連業種の取得

「清掃施設工事業」ではないことを正しく理解し、自社の事業拡大に必要な「内装仕上工事業」などの業種を明確に定めることが成功への第一歩です。

建設業許可の取得には、技術者要件や財産的基礎の証明など、専門的な知識と多くの書類が必要となります。ご自身の事業を分析し、最適な業種選定許可要件の確認に不安を感じる場合は、建設業許可に特化した行政書士などの専門家に相談することをお勧めします。

弊所のご紹介

弊所は建設業許可に特化した行政書士事務所です。
ご相談は無料で承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。元、型枠大工の行政書士が全力でお客様の事業をサポートいたします。

また、弊所の取り組みとして近年現場で導入が進んでいる「建設キャリアアップシステム」や「グリーンサイト」、「buildee」の登録代行も、建設業許可と合わせて行っております。
もちろん、「登録代行だけ」「建設業許可だけ」も大歓迎です。気になった方は是非、下記サイトをご覧ください。

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