【どの業種をとればいい?】鉄筋工事を行う場合に必要な建設業許可をケース別に解説!
【どの業種をとればいい?】鉄筋工事を行う場合に必要な建設業許可をケース別に解説!

鉄筋工事業者の皆様、日々の作業お疲れ様です。
鉄筋工事は、鉄筋コンクリート造(RC造)や鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)の建物の強度と安全性を支える、極めて重要な専門工事です。請負金額が500万円を超えるようになると、「建設業許可」の取得は事業の信頼性を高め、大規模案件を受注するために不可欠となります。
しかし、鉄筋工事という専門性の高い工法を主軸としているため、「鉄筋工事業の許可だけでいいのか?」「鉄筋の継手や加工を含めて請け負えるのか?」といった疑問を持つ事業主様が多くいらっしゃいます。
この記事では、これから建設業許可の取得を考える鉄筋工事業者様向けに、事業内容に応じた最適な業種選択と、主軸となる「鉄筋工事業」の範囲を、具体的なケース別に徹底的に解説します。少しでも参考にしていただけると幸いです。
目次
1|建設業許可の基本:鉄筋工事と「500万円の境界線」

鉄筋工事を請け負う事業者が建設業許可を取得する必要があるのは、以下の基準を超過する場合です。この金額には、鉄筋、材料、運搬費、そして加工や継手の費用もすべて含まれます。
| 許可の要否基準 |
| 許可が不要:1件の請負代金が500万円(税込)未満の工事 |
| 許可が必要:1件の請負代金が500万円(税込)以上の工事 |
大規模な建築現場では、鉄筋工事の請負金額が500万円を超えるケースが一般的です。安定した受注体制と元請けからの信頼を築くためには、早期の許可取得を強く推奨します。
2|鉄筋工事に必要な許可業種はこれ!

鉄筋工事を主業とする事業者が取得すべき、唯一の主たる業種は「鉄筋工事業」です。鉄筋工事の一連の流れは、この一つの業種に包括されています。
| 業種名 | 鉄筋工事業 |
| 工事の内容 | 棒鋼等の鋼材を加工し、接合し、又は組立てる工事 |
| 具体的な守備範囲 | 鉄筋の切断、曲げなどの加工、設計図に基づいた組立て(配筋)、そしてガス圧接などの接合作業の全てがこの業種に含まれます。 |
| 重要度 | 鉄筋工事を主業とする事業者が取得すべき、唯一の主たる業種です。 |
結論: 鉄筋工事の主要業務は「鉄筋工事業」で完結する!
鉄筋の加工、組立て(配筋)、そしてガス圧接による継手といった鉄筋工事の核心となる業務は、「鉄筋工事業」の建設業許可を取得することで全て行うことが出来ます。これらの作業のために、他に「とび・土工工事業」などの工事業を追加で取得する必要はありません。
3|ケース別解説!鉄筋工事業の守備範囲と他業種の境界線

鉄筋工事業者が、その許可範囲内で請け負える工事と、他の業種の許可が必要となる工事の境界線を明確に解説します。
ケース1:鉄筋の加工・組立て・継手まで一括で請け負う場合
工場での加工、現場への鉄筋の搬入、設計図に基づいた鉄筋の組立て(配筋)、そして必要な箇所でのガス圧接などの継手まで、鉄筋工事の全工程を一括して請け負う場合です。
| 請負工事の範囲 | 必要な許可業種 | 理由と戦略 |
| 鉄筋加工・組立て + 全ての継手 | 鉄筋工事業 | 鉄筋工事業の許可があれば、鉄筋工事の全工程を請け負うことが可能です。この場合、他の業種許可は一切必要ありません。 |
【付帯工事について】
鉄筋工事を行う上で必要となるごく軽微な足場の設置や作業用通路の確保などは、「主たる鉄筋工事に付随する軽微な工事」として、鉄筋工事業の許可範囲内で施工できます。ただし、その工事が独立して請負金額が大きくなる場合は、後述の業種が必要になります。
ケース2:溶接・接合対象が鉄筋以外の場合(鋼構造物工事業との違い)
鉄筋を接合する作業は鉄筋工事業ですが、H形鋼などの「構造用鋼材」(鉄骨)の加工や溶接を主に行う場合は、業種が異なります。
| 接合対象 | 該当する業種 | 理由と区別 |
| 鉄筋の加工・継手 | 鉄筋工事業 | 鉄筋に特化。 |
| H形鋼などの鋼材の加工・溶接 | 鋼構造物工事業 | 鉄骨造の主要構造部材の加工・組立てに必要。 |
| 両方を請け負う場合 | 鉄筋工事業 と 鋼構造物工事業 の兼業 | 鉄筋と構造用鋼材の両方の加工・接合を請け負う場合は、両方の許可を取得する必要があります。 |
鉄筋工事業者が鉄骨の溶接を請け負うことは一般的ではありませんが、今後請負う可能性があるなどの場合は鋼構造物工事業の許可が不可欠です。
ケース3:土木分野の鉄筋工事を請け負う場合(とび・土工工事業の境界線)
土木構造物(擁壁、橋梁下部工など)への鉄筋配筋作業自体は鉄筋工事業です。しかし、元請けから基礎工事全体やコンクリート打設を求められた場合が境界線となります。
こちらもあまり一般的ではないですが、今後事業拡大をして基礎工事を一括で請け負ったりする場合に必要になります。
| 請負工事の範囲 | 必要な許可業種 | 現実的な判断 |
| 土木構造物への鉄筋の配筋・組立のみ | 鉄筋工事業 | 鉄筋工事業で完結します。 |
| 基礎杭の頭部処理、掘削、またはコンクリート打設を含む広範な基礎工事 | とび・土工工事業 | 鉄筋工事に付随する範囲を超えて、基礎工事や土工、コンクリート打設を請け負う場合は、とび・土工工事業の許可が必要です。 |
もし、鉄筋工事業の範囲を超えてこれらの工事を請け負う可能性がある場合は、必ずそれぞれの業種の許可を取得するか、または許可を持つ専門業者に下請けとして依頼するという方法もあります。
4|鉄筋工事業の守備範囲:本当に他の業種は不要?

鉄筋工事業者が最も不安に感じやすい点、すなわち「鉄筋工事の許可のみで対応可能」という点について、再度明確に解説します。
鉄筋工事業の許可範囲の明確性
建設業法において、「鉄筋工事業」には「棒鋼等の鋼材を加工し、接合し、又は組立てる工事」が含まれます。
- 加工・組立て: 鉄筋を切断、曲げ、配置、結束(配筋)する作業。
- 継手(接合): ガス圧接や溶接継手など、組立てる過程で鉄筋を繋ぐ作業(「接合し」の定義に含まれる)。
この定義により、鉄筋工事業者が鉄筋工事の一連の流れを全て請け負う場合、その工事全体が「鉄筋工事業」の範囲内に収まるため、他の業種許可を改めて取得する必要はありません。
疑問に思われる方が多い圧接工事に関しても、「鉄筋工事業」に含まれます。
「鉄筋工事」に関係する主要な工程はほぼすべて「鉄筋工事業」に該当するといっても過言ではありません。
許可取得がもたらす信用力の向上
建設業許可を取得することで、以下のような大きなメリットが得られます。
- 対外的な信用力の向上: 経営体制、技術力、財産的基礎が法令の基準を満たしていることの証明となり、元請けや金融機関からの信用が高まります。
- 競争力の強化: 500万円以上の大規模工事へ入札・受注が可能となり、工事規模の天井がなくなります。
- 社会保険加入の適正化: 許可取得は、法令順守(コンプライアンス)の証であり、社会保険加入の適正化にも繋がります。
5|許可取得の最善戦略:鉄筋工事業からスタート

鉄筋工事業者様が、建設業許可を取得し、事業を安定・拡大させるための手順をまとめます。
ステップ1:主たる許可業種を決定する
鉄筋工事を主軸とする事業者は、まず「鉄筋工事業」を主たる許可業種として決定し、その要件を満たします。
ステップ2:許可要件の確認
主たる業種について、以下の要件を満たせるかを確認します。
- 経営業務の管理責任者(経管):適切な経営経験があるか。
[難解な要件をクリア!経営業務の管理責任者証明のポイントとケース別対応策] - 営業所技術者(旧専任技術者):1級・2級建築施工管理技士、鉄筋施工技能士、または実務経験10年など、該当業種の要件を満たせるか。特に、鉄筋工事業者様は「登録鉄筋基幹技能者」や「鉄筋施工技能士」を持っていると、要件を満たすのに非常に役立ちます。
[資格と実務経験が鍵! 建設業許可の営業所技術者(専任技術者)の要件を分かりやすく解説!] - 財産的基礎:適切な資金力(500万円以上の残高証明など)があるか。
[【建設業許可の要件】財産要件の500万円。無い場合は?融資でもいい?行政書士が徹底解説!]
ステップ3:兼業許可の検討(業務範囲拡大等)
事業拡大のため、将来的に請け負う可能性のある以下の業種について要件を満たせるかを確認し、申請を検討します。
- とび・土工工事業: 土木分野の基礎工事全般や、大規模な足場組立てを請け負う場合。
- 鋼構造物工事業: 鉄筋以外の構造用鋼材(鉄骨)の製作・加工を請け負う場合。
「鉄筋工事業」の許可は、貴社の技術力と安全性を対外的に証明し、請負金額の制限を取り払う重要なパスポートです。
許可取得は、信頼獲得と事業成長のための大きな一歩です。どの業種の許可を取得すべきか、また要件確認や申請手続きに不安がある場合は、建設業許可専門の行政書士にご相談いただくことを強く推奨します。
貴社の事業内容に最適な建設業許可を取得し、安心して次の大規模な仕事を受注しましょう!
弊所のご紹介
弊所は建設業許可に特化した行政書士事務所です。
ご相談は無料で承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。元、型枠大工の行政書士が全力でお客様の事業をサポートいたします。

また、弊所の取り組みとして近年現場で導入が進んでいる「建設キャリアアップシステム」や「グリーンサイト」、「buildee」の登録代行も、建設業許可と合わせて行っております。
もちろん、「登録代行だけ」「建設業許可だけ」も大歓迎です。気になった方は是非、下記サイトをご覧ください。


