【左官工事業だけでいい?】左官工事を行う建設業者に必要な建設業許可をケース別に解説!
【左官工事業だけでいい?】左官工事を行う建設業者に必要な建設業許可をケース別に解説!

左官工事を行う建設業者様、日々の業務お疲れ様です。
左官工事は、建物の壁や床、天井などにモルタルやプラスター、漆喰などを塗り、仕上げを行う意匠と機能性を兼ね備えた専門工事です。この左官工事を請負金額が500万円(税込)以上の工事として行う場合、法律に基づき建設業許可を取得する必要があります。
左官工事を専門に行う場合、取得すべき業種は文字通り、「左官工事業」です。
しかし、実際の現場では、左官工事の前後に付随する作業や、仕上げ工事全体を一括して請け負う場合もあります。そこで「左官工事業だけで良いのか?」という疑問が生じます。タイル貼り、ブロック積み、コンクリートの補修など、左官工事と密接に関わる作業の境界線は曖昧になりがちです。
この記事では、左官工事を中心に請け負う事業者が取得すべき建設業許可の業種について、付帯工事の考え方を含め、詳しく解説します。
これから建設業許可の取得をお考えの左官工事業者様に、少しでも参考にしていただけると幸いです。
1|左官工事の核となる許可:左官工事業

まず、左官工事を請け負う上で最も重要となるのが「左官工事業」の許可です。
左官工事業とは?
左官工事業は、「工作物に壁土、モルタル、しっくい、プラスター、繊維等をこて塗り、吹付け、又ははり付ける工事」と定義されています。
| 工事の具体例 | 左官工事業の適用 |
| モルタル・プラスター塗り | 適用 |
| 漆喰(しっくい)塗り | 適用 |
| セメント・モルタルによる床仕上げ | 適用 |
| 乾式吹付け(モルタルなど) | 適用 |
あなたの事業が専ら塗り工事のみを請け負う場合であれば、原則として「左官工事業」の許可のみで問題ありません。
関連記事:左官工事業の詳細解説はこちら
2|ケース別解説:左官工事業以外の許可が必要となる場合

左官工事業者が、純粋な塗り工事の範囲を超えて、法令上の問題が生じやすい、または事業拡大のために許可が必要となるケースを解説します。
ケース1:タイル貼りやレンガ・ブロック積みまで一括して請け負う場合
左官工事で仕上げた下地にタイルを貼ったり、レンガやコンクリートブロックを積んで塀を造ったりする工事をセットで請け負うケースでは、別で「タイル・れんが・ブロック工事業」が必要になる場合があります。
| 請け負う工事の範囲 | 必要な許可業種 | 左官工事業との境界線 |
| モルタルなどの下塗り、仕上げ塗り | 左官工事業 | 塗り工事そのもの。 |
| タイル、レンガ、ブロックの貼り付け・積み上げ | タイル・れんが・ブロック工事業 | 全く別の専門工事業です。左官工事とは明確に区分されます。 |
タイル・れんが・ブロック工事業は、「タイル、れんが、コンクリートブロック等により工作物を築造し、又は工作物に貼り付ける工事」と定義されており、左官工事とは完全に別の業種です。
【重要ポイント】
タイル貼りやブロック積みを請負金額500万円以上で請け負う場合は、左官工事業に加えて「タイル・れんが・ブロック工事業」の許可が必須です。
ケース2:左官工事と密接に関わる付帯工事の扱い
建設業法上「付帯工事」とは、主たる建設工事を施工するために必要不可欠であり、かつ従として施工される工事を指します。この付帯工事の考え方が非常に重要になります。
| 付帯する作業 | 必要な許可業種 | 付帯工事としての判断 |
| 左官下地処理のための清掃、簡単なケレン | 左官工事業 | 含まれる。 |
| 下地の凸凹を調整するためのごく軽微なハツリ(削り) | 左官工事業 | 従として軽微に行う場合は、左官工事の範囲内と解釈されることが多い。 |
| 防水層形成のためのモルタル防水 | 左官工事業 | モルタル等による塗り工事であるため、左官工事業に含まれる。ただし、アスファルト防水やFRP防水など専門的な防水層を形成する場合は防水工事業が必要。 |
| 内装仕上げとしてのボード貼り | 内装仕上工事業 | 付帯工事とは見なされにくい。ボード貼りを広範に請け負う場合は、内装仕上工事業の許可が必要。 |
付帯工事が認められるための条件
付帯工事として他の業種の許可が不要となるのは、以下の要件を満たす場合に限られます。
- 必要不可欠性:主たる左官工事を施工するために、どうしてもその作業が必要であること。
- 従たる軽微性:その作業が主たる左官工事に比べて工事量や金額が少ないこと。
- 請負の一体性:他の工事を別個に切り離して請け負うことが一般的ではないこと。
【注意】
もし、下地のハツリ工事やボード貼りが独立した請負金額となり、その金額が左官工事の金額を超える場合は、たとえ左官工事とセットであっても、それぞれの業種の許可が必要となります。
関連記事:内装仕上工事業の詳細解説はこちら
ケース3:外壁や屋根など「防水機能」を伴う工事を請け負う場合
左官工事には、モルタル防水のように防水機能を果たすものも含まれますが、専門的な防水工法を請け負う場合は、許可業種が変わります。
| 請け負う工事の範囲 | 必要な許可業種 | 理由と区別 |
| モルタルによる防水層の形成 | 左官工事業 | 塗り工事の一種として左官工事業に含まれる。 |
| アスファルト、ウレタン、FRPなど専門的な材料による防水層の形成 | 防水工事業 | 塗り工事とは区別される専門的な防水処理であり、防水工事業の許可が必要。 |
もし、左官工事業者として外壁の防水・補修工事を幅広く請け負い、モルタル防水だけでなく、ウレタンやFRPによる防水も行う場合は、「防水工事業」の許可を兼業する必要があります。
関連記事:防水工事業の詳細解説はこちら
ケース4:建物の基礎や構造物に関わる補修工事を請け負う場合
左官技術を活かして、コンクリート構造物のひび割れ補修や、基礎の補強・整備を行う場合があります。
| 請け負う工事の範囲 | 必要な許可業種 | 境界線と判断 |
| コンクリートの表面的な補修(ひび割れへの注入、表面のモルタル補修) | 左官工事業 | モルタルやセメント系材料の塗り・充填であるため、左官工事業の範囲内。 |
| 基礎や土間コンクリートの打設、広範囲なハツリ | とび・土工・コンクリート工事業 | 構造物の基礎や、広範な土木工事に関わる作業は「とび・土工・コンクリート工事業」に分類される。 |
とび・土工工事業は、基礎工事やコンクリート打設、大規模な足場の設置など、非常に広範囲の工事をカバーする業種です。左官工事を主としていても、基礎の土間コンクリート打設も同時に請け負う場合は、「とび・土工・コンクリート工事業」の許可が必要となる可能性が高いです。
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3|複数の許可を取得するメリット

複数の建設業許可を取得することには以下のようなメリットがあります。
複数許可を取得するメリット
- 請負可能範囲の拡大: 一つの現場で、関連工事もワンストップで一括受注できるようになり、顧客からの信頼度が向上します。
- 経営の安定化: 特定の工事需要に依存せず、多角的な事業展開が可能になり、経営が安定します。
- 合法的な対応: 500万円を超えるその他の工事を請け負う際も、許可があれば合法的に工事を進められます。
4|建設業許可取得に必要な要件

建設業の許可を取得に必要な主要要件を解説します。その中でも、特に「経営業務の管理責任者の配置」と「営業所技術者の配置」は人的要件と呼ばれ、難易度が高い要件となっています。
また、複数許可を取得する場合は、それぞれの業種で営業所技術者の要件を満たす必要があります。
1. 経営業務の管理責任者(経管)の配置
建設業の経営を適正に行うための体制を確保する要件です。
- 要件の概要: 役員のうちの一人、または役員に準ずる地位の方が、建設業の経営業務について一定の経験と実績を有している必要があります。
- 例: 建設業に関して5年以上の経営経験、または6年以上の経営業務を補佐する経験などが必要です。
ポイント: 2020年(令和2年)の法改正により、要件が柔軟になりましたが、一般的には「5年の経営経験」で証明するケースが多いです。
関連記事:難解な要件をクリア!経営業務の管理責任者証明のポイントとケース別対応策
2.営業所技術者の配置
建設業の許可を受けた営業所において、請負契約の適正な締結や履行を技術的な側面から確保するための要件です。
- 要件の概要: 各営業所ごとに、その業種に関する専門的な知識や実務経験を持つ技術者を、常勤かつ専任で配置する必要があります。
- 例: 以下のいずれかを満たしている必要があります。
- 資格保有者: 対象の国家資格(例:建築施工管理技士や〇〇技能士など)を持っている。
- 実務経験者: 許可を受けようとする業種に関して、10年以上の実務経験がある(指定学科を卒業している場合は、3年または5年に短縮可能)。
ポイント:同一営業所内であれば、一人の人間が「経営業務の管理責任者」と「営業所技術者」の両方の要件を満たしている場合、一人二役を兼ねることができます。
個人事業主(一人親方)で建設業許可を取得する場合は、「経営業務の管理責任者」と兼任する場合がほとんどです。
関連記事:資格と実務経験が鍵! 建設業許可の営業所技術者(専任技術者)の要件を分かりやすく解説!
3. 適切な社会保険への加入
建設業で働く労働者の待遇改善と、企業のコンプライアンス遵守のため、社会保険への加入は必須の要件となっています。
- 要件の概要: 建設業者が雇用するすべての従業員について、健康保険、厚生年金保険、雇用保険に適切に加入し、その加入状況を証明することが求められます。(個人の場合は国民健康保険、国民年金。従業員を雇っている場合は雇用保険。)
- 重要性: 適切な社会保険への加入は、今や建設業許可を取得・維持するための重要な前提条件です。未加入や加入手続きの不備がある場合、許可申請は受理されません。
関連記事:【建設業許可の要件】適切な社会保険とは?ケース別に徹底解説!
4. 財産的基礎・金銭的信用
工事を請け負い、事業を継続していくための経済的な基盤があることを示す要件です。
- 自己資本(純資産の合計額)が500万円以上であること。
- 500万円以上の資金を調達する能力があること(金融機関の残高証明書などで証明)。
特定建設業を取得する際に必要な財産要件は格段に厳しくなります。
関連記事:【建設業許可の要件】財産要件の500万円。無い場合は?融資でもいい?行政書士が徹底解説!
5. 欠格要件に該当しないこと
- 許可申請者が、建設業法で定められた欠格要件(法律違反による罰則、成年被後見人・被保佐人など)に該当しないことが必要です。これには、申請者本人だけでなく、役員も含まれます。
関連記事:【知らなかったでは済まされない】建設業許可の欠格要件とは?代表者・役員が注意すべきポイント
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5|まとめと許可取得の戦略

左官工事を請け負う事業者が建設業許可を取得する際の業種選択について、結論と戦略をまとめます。
結論:左官工事業だけで良いのはどんな場合?
あなたの事業が、請け負うすべての工事において「モルタル、プラスター、漆喰などの塗り工事」のみに限定され、タイル貼りや構造物の基礎工事を同時に請け負わない場合は、原則として左官工事業のみで問題ありません。
許可取得の戦略
- 左官工事業は必須:請負金額に関わらず、左官工事を主たる事業とするなら、まずは左官工事業の許可取得を目指します。
- 兼業の優先順位:事業拡大を目指す場合、左官工事と関連性の高い順に、タイル・れんが・ブロック工事業、内装仕上工事業、防水工事業、とび・土工工事業の兼業を検討します。
- 付帯工事の活用:他の許可を持たない場合、左官工事を主たる工事とし、他の工事が「必要不可欠かつ従たる軽微な工事」であることを証明できる範囲に限定して請け負います。
特に、タイル・れんが・ブロック工事業は、左官工事業とセットで請け負うケースが多いため、営業所技術者の要件を同時に満たせる場合(資格保有など)は、積極的に取得を検討すべき業種です。
許可取得は専門家への依頼が確実です
建設業許可申請は、その要件の多様さと、提出書類の多さ・複雑さから、専門知識なしに進めると時間と労力を大幅に浪費するリスクがあります。
- 要件の正確な判断:
- お持ちの資格や実務経験が、どの業種の許可要件を正確に満たすのか。
- 経営陣の経験や会社の財務状況が、現行の法規制に照らして適格か。
これらの判断には、専門的な知見が必要です。
- 煩雑な書類作成と収集:
- 登記簿謄本、納税証明書、残高証明書、工事経歴書など、膨大な種類の書類を抜け漏れなく、かつ指定された様式で作成・収集する必要があります。
- 許可行政庁(国土交通大臣または都道府県知事)とのやりとりや、書類の軽微な修正にも対応しなければなりません。
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