【どの業種をとればいい?】設備工事を行う場合に必要な建設業許可をケース別に解説!

【どの業種をとればいい?】設備工事を行う場合に必要な建設業許可をケース別に解説!

設備工事業者の皆様、日々の作業お疲れ様です。

設備工事とは、建築物やインフラに対し、水、空気、熱などの機能を供給・処理するための装置や配管を設置する工事の総称です。この設備工事を請け負う際に、請負金額が500万円(税込)以上となる場合、事業者は建設業許可を取得する義務が生じます。

しかし、設備工事は非常に広範な分野を指し、建設業許可の29業種の中でも特に業種の区分が細かく分かれています。そのため、「空調設備も給排水もやるが、一つの許可でいいのか?」「公共の水道工事も請け負いたいが、一般の管工事の許可で足りるのか?」といった疑問を持つ事業主様が多くいらっしゃいます。

この記事では、大型の機械設置や電気系統工事を除く、設備工事の主要分野である「管工事」「消防施設工事」「水道施設工事」の3つの業種に焦点を当て、最適な許可業種の組み合わせを、具体的なケース別に徹底解説します。これから建設業許可の取得をお考えの方に、少しでも参考にしていただけると幸いです。

1|設備工事の主要3業種:管工事、消防施設工事、水道施設工事

設備工事の中でも、水、空気、衛生、消火、インフラの分野で最も多く必要とされるのが、以下の3つの専門工事業です。

1. 管工事

業種名管工事
工事の内容建物内の給水、給湯、排水、衛生設備、空調設備、ガス管、消火設備などの配管を設置、または改造する工事。
具体的な例エアコン(空調設備)の設置工事、トイレやキッチン(衛生設備)の配管工事、ボイラーや冷温水発生機の設置、給排水管の布設工事など。
重要度建物内部のライフラインに関わる設備工事の中核となる業種です。

空調・給排水設備工事を主とする事業者は、この管工事の許可が不可欠です。この許可範囲には、建物内の配管工事全般が含まれます。(※ただし、機器の運転に必要な電気系統の配線工事は原則として電気工事の許可が必要です。)

[管工事の詳細解説はこちら]

2. 消防施設工事

業種名消防施設工事
工事の内容消火設備、警報設備、避難設備、消火活動に必要な設備など、消防法に基づいて設置される各種設備を設置、または整備する工事。
具体的な例スプリンクラー設備の設置、屋内・屋外消火栓設備の設置、泡消火設備、ガス消火設備の設置、火災報知機(警報設備)の設置など。
重要度建物の人命安全に関わる設備であり、消防法という専門法規に基づく高度な専門性が求められる業種です。

消防設備士の資格を要する専門的な消火・警報設備工事を請け負う場合、この消防施設工事の許可が必要です。

[消防施設工事の詳細解説はこちら]

3. 水道施設工事

業種名水道施設工事
工事の内容公共団体から直接請け負う、上水道、工業用水道等の取水、浄水、配水等の施設を築造する工事、または公共下水道の処理施設を築造する工事。
具体的な例浄水場、配水池、ポンプ場の建設・改修、公道下の大規模な配水管布設工事(公道内の工事)。
重要度公共性の高い大規模インフラに関わる工事であり、管工事とは明確に区別されます。

公共事業として、水道施設そのものの建設や公道下の一次的な管路工事を請け負う場合に、この水道施設工事の許可が不可欠です。

[水道施設工事の詳細解説はこちら]

2|ケース別解説:複雑な設備工事に必要な兼業許可

実際の設備工事では、複数の業種が複合的に関わることが一般的です。請け負う工事の範囲によって、複数の許可を兼業する必要があります。

ケース1:建物内の給排水と公共管路工事を請け負う場合

建物内部の設備工事(管工事)と、建物外部の公共インフラ工事(水道施設工事)の両方を請け負うケースです。

請け負う作業の範囲必要な許可業種理由と区別
ビル内の給排水・衛生・空調設備の設置管工事建物内を主とする配管工事。
公共団体から請け負う公道下の配水管布設工事水道施設工事公共インフラを主とする施設工事。
両方を請け負う管工事と水道施設工事の両方業種の定義が明確に分離されているため、それぞれ500万円以上の工事を請け負う場合は両方の許可が必要です。

公道下での布設工事を行う場合は、水道設備工事業が必要になります。公道下で工事を請負う可能性があるのであれば、取得を検討しましょう。

ケース2:スプリンクラーなどの消火設備を請け負う場合

消火設備を請け負う際、その配管部分は「管工事」の定義にも当てはまるため、判断に迷いが生じます。

請け負う作業の範囲必要な許可業種境界線と判断
消火設備の配管の設置、ガス消火設備の設置消防施設工事消防法に基づき、消火機能全体を設置・整備する工事は、消防施設工事に該当します。
ただし、建物内の配管工事として請け負う場合管工事スプリンクラーの配管管工事の定義にも含まれるため、解釈が分かれる場合があります。

行政庁によっては、スプリンクラーなどの配管部分は管工事の許可のみで施工できると認めるケースもあります。しかし、消防法に基づく検査や届出、設備全体の機能保証が求められるため、安全策として消防施設工事の許可を取得することが強く推奨されます。特に、消火設備全般を請け負い、事業の専門性を高めるなら、消防施設工事の許可は必須です。

ケース3:大規模な管路布設工事で掘削・基礎を伴う場合

公共の水道施設工事を請け負う場合、管路布設のために大規模な掘削や、付随する道路の復旧作業が発生します。

請け負う作業の範囲必要な許可業種理由と境界線
管路の布設、接続、施設本体の築造水道施設工事公共水道施設を築造する主たる工事。
広範囲にわたる掘削、基礎地盤の改良、大規模な土留めとび・土工工事業土木分野の基礎的な工事であり、水道施設工事の付帯工事の範囲を超えて、独立して大規模な土木作業となる場合は、とび・土工工事業の許可が必要です。

水道施設工事の許可には、管路布設に必要な掘削や埋め戻し作業、および軽微な道路舗装の復旧作業は含まれます。しかし、請負金額の大部分が広範囲な土工、地盤改良、基礎工事に割かれる場合は、とび・土工工事業の許可が必要となります。

[とび・土工工事業の詳細解説はこちら]

その他

他にも、設備工事を元請として請負うのであれば、「土木一式工事」が必要となる場合もあります。また、前述しましたが、大規模な電気系統の配線工事も行う場合はさらに「電気工事業」の許可が必要となります。
設備工事といっても、様々な種類の工事があるため、まずはご自身が「管工事に該当する工事の他にどのような工事を請負っていくか」を明確にしましょう。

3|付帯工事の考え方:複数の許可が不要になるケース

複数の専門工事が関わる設備工事において、すべての業種の許可を取得することが原則ですが、「付帯工事」の考え方を理解すれば、許可業種を限定できる場合があります。

付帯工事の定義と適用

建設業法における「付帯工事」とは、主たる建設工事を施工するために必要不可欠であり、かつ従として施工される工事を指します。

例: 管工事業者が、給湯器を設置する際に、機器を固定するために必要な壁面へのごく小さな補強(大工工事や内装仕上工事の一部)を行う場合。

この補強工事は、主たる管工事に必要不可欠で、かつ工事量が軽微であるため、管工事の許可のみで施工できると解釈されます。

付帯工事が認められない(許可が必要な)ケース

付帯工事として他の許可が不要となるのは、以下の条件を満たさない場合に許可が必要となります。

  1. 独立した専門工事となる場合:主たる工事と比べて工事量や金額が大きく、単独で専門業者が請け負うことが一般的な工事(例:水道施設工事に伴う大規模な道路舗装の全復旧や、広範囲な土砂の運搬)。
  2. 主従関係が逆転する場合:例えば、消防施設工事を主軸とする事業者が、建物の給排水管の大部分の布設を「付帯」として請け負う場合など。これは、主たる工事が消防施設工事ではなくなり、管工事となってしまうため認められません。

【現実的な戦略】

設備工事業者は、請け負う仕事の大半を占める主たる業種(管工事など)の許可をまず取得し、それ以外の工事は付帯工事の範囲内に収めるか、または許可を持つ他の専門業者に分離発注することが、コンプライアンス上の鉄則です。

4|許可取得の最善戦略:主たる業種を明確にする

設備工事業者が、建設業許可を取得し、事業を安定・拡大させるための手順をまとめます。

ステップ1:主たる許可業種を決定する

あなたの事業で最も多く、または最も大規模に請け負う工事が何であるかを特定します。

  • 給排水、衛生、空調設備:管工事
  • 公共の水道施設、大規模な公道下の管路布設:水道施設工事
  • 消防法に基づく消火設備全般:消防施設工事

まずは、この主たる業種の許可取得に注力します。

ステップ2:兼業の必要性を検討する

主たる業種の許可で請け負えない工事がある場合は、兼業許可の取得を検討します。

管工事の許可は、建物内の設備工事を包括的に請け負うための必須ライセンスとなるため、まずはこれを主軸に、消防施設工事水道施設工事兼業することで、受注の幅を大きく広げることが可能です。

ステップ3:許可要件の確認と申請

選択した業種ごとに、以下の要件を満たせるかを確認し、申請準備を進めます。

  1. 経営業務の管理責任者(経管)
    [難解な要件をクリア!経営業務の管理責任者証明のポイントとケース別対応策]
  2. 営業所技術者(旧専任技術者):資格や実務経験が、選択した業種の要件を満たしているか。設備工事系の資格(例:管工事施工管理技士)は、営業所技術者となるために非常に役に立ちます。
    [資格と実務経験が鍵! 建設業許可の営業所技術者(専任技術者)の要件を分かりやすく解説!]
  3. 財産的基礎
    [【建設業許可の要件】財産要件の500万円。無い場合は?融資でもいい?行政書士が徹底解説!]

建設業許可は、貴社の技術力と信頼性を証明し、請負金額の制限を取り払うための重要なパスポートです。複数の業種にまたがる場合は、営業所技術者が複数の業種の要件を兼任できる場合もあるため、効率的な取得戦略を立てることが可能です。

どの業種が最適か、要件確認や申請手続きに不安がある場合は、建設業許可専門の行政書士にご相談いただくことを強く推奨します。

弊所のご紹介

弊所は建設業許可に特化した行政書士事務所です。
ご相談は無料で承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。元、型枠大工の行政書士が全力でお客様の事業をサポートいたします。

また、弊所の取り組みとして近年現場で導入が進んでいる「建設キャリアアップシステム」や「グリーンサイト」、「buildee」の登録代行も、建設業許可と合わせて行っております。
もちろん、「登録代行だけ」「建設業許可だけ」も大歓迎です。気になった方は是非、下記サイトをご覧ください。

Follow me!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です